アートの聖書

美術館巡りの日々を告白。美術より美術館のファン。

国立西洋美術館〜美しき愚か者のタブローたち

芸術の秋と誰が呼んだか。上野には秋が似合う。日本最大のアートシティ。石を投げれば美術館にあたり、町のレンタカー屋さんにも企画展のポスターが壁を奪い合うようにペタペタ貼られている。日本屈指の絵画公園の雄が東京都美術館、そして国立西洋美術館。…

「カナレットとヴェネツィアの輝き」展〜SOMPO美術館

「カナレットとヴェネツィアの輝き」が2024年10月12日から 12月28日まで新宿のSOMPO美術館で開催。18世紀のヴェネツィアの風景画を中心に約60点を展示。そのうちカナレットの作品は約20点。この美術展は静岡から始まり、新宿、京都、山口を巡回する。 静岡県…

ゴッホの庭:ひろしま美術館

「広島」や「ヒロシマ」は眼にするが「ひろしま」は珍しい。修学旅行生や観光客が路面電車で目指す原爆ドームの近くに静かなる衝撃は存在する。 〈ひろしま美術館〉 ひとりの画家をコンセプトに造られた美術館は多い。だが、たった一枚のタブローのために構…

豊田市美術館&愛知県美術館

野球の国際大会『プレミア12』を追いかけて愛知県に来た。2024年の11月9日と10日。今年は野球場、温泉、美術館が旅の3点セット。新宿から深夜バスに揺られ、快晴の早朝6時前に豊田市に到着。マクドナルドで時間を潰し、豊田市美術館に向かった。 豊田市美術…

府中市美術館〜アルフォンス・ミュシャの囁き

東京都の府中市美術館は2010年10月の開館。2000点ほどの収蔵品の中から常設展示を行い、その多くが日本の絵画。市制施行70周年を記念して『アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界』が2024年9月21日から12月1日まで開かれた。 府中駅から徒歩20分。閑静な住宅…

諸橋近代美術館〜サルヴァドール・ダリの道

高速バス夢街道会津号に揺られ新宿から4時間半。バスは10分遅れで猪苗代駅に到着。諸橋近代美術館への会津バスに間に合った。ここから25分。山道を縫って走る。 チュッパチャプスの水玉模様のような小雨が降る諸橋近代美術館。この日は雲に隠れていたが雄大…

埼玉県立近代美術館〜無音の旋律を奏でるミュージアム

美術館は土地というカンヴァスにどんな建物を描くかの空間アートである。スケールは大きな重力だが、時に弊害になることもある。狭い茶室の座布団に宇宙が宿るように、町の小さな美術館が都会を圧倒する。大事なのはスケールではなく密度。 美術館は川のほと…

大阪中之島美術館〜大阪と日本人の底力

大阪中之島美術館は19世紀後半から21世紀までの近代・現代美術の約6000点を所蔵するミュージアム。僕が生まれた1983年から構想され、経済難などを乗り越えて2022年2月2日の開館。40年近く待ち侘びた大阪民は多い。所有は大阪市。 美術館までの道のり 外観と…

ポーラ ミュージアム アネックス〜マティス ― 色彩を奏でる

ポーラ ミュージアム アネックスはポーラ銀座ビル3階にあるギャラリー。銀座一丁目という一等地でありながら、すべての企画展を無料で開放している。銀座一丁目駅を出てすぐだが、新宿から乗り換えが面倒くさい。山手線で有楽町駅まで行き8分歩く。 マティス…

ポーラ美術館〜静謐なる美の森とスイーツ

「モネが好きなら行ったほうがいいっすよ。俺もたまに行くんすよ」。そんな会話を表参道の前前職の上司としてから6年かかってしまった。 クロード・モネ《睡蓮》1907年 新宿からポーラ美術館に行くには小田急線と箱根登山鉄道を乗り継ぐか、バスタ新宿から小…

釜山のパブリックアート〜街の美術館

韓国の釜山に行くと様々なパブリック・アートに出逢える。美術館や釜山博物館に行かなくてもいい。忙しい観光の途中に少し足を止めてアートに触れて欲しい。街の風景を愉しみ、行き交う人々に耳をすませながら、無料でアート鑑賞ができる。 金海(キンメ)国…

真夜中のイカロス ♯恵比寿東公園トイレ

尾崎豊は『Freeze Moon』で歌った。俺たちの真夜中の翼はボロボロになっちまう。そんな翼を慰めるものが都会にあるのか。 槇文彦がでデザインを手がけた恵比寿東公園トイレはイカをイメージして作られた。しかし、イカはイカでも翼を広げたイカロス。 トイレ…

アンリ・マティス展〜無重力ピエロ

美術館を訪れたのは2年ぶり。江戸東京博物館「冨嶽三十六景への挑戦 北斎と広重」以来だった。昨年にポッカリ空白を作ったのは緊急事態宣言のせいでゴッホ展に入場制限がかかり、チケットを入手できなかったから。怨みつらみで美術への興味が消火されつつあ…

ゴッホと静物画とテオ:SOMPO美術館

"> ">新宿に住んでいると石を投げれば人にあたり、映画館も美術館もごった返している。あたかも日本は映画ブーム、美術ブームと錯覚する。たった一街の熱狂、24h流行しかない街。他の地域と乖離しすぎている新宿はコンクリートの村。大都会の田舎である。ゴ…

入江長八と伊豆松崎〜漆喰芸術の道

文章を習っている仲間が2024年12月に伊豆松崎町で映画の上映会を行う。文章の先生がトークショーを行うので、会場の下見に同行。新宿駅9時25分発の踊り子号に乗って伊豆急下田駅へ。刺身定食を頂き、東海バスで松崎のバス停を目指す。 伊豆の長八美術館 岩科…

ハーモ美術館〜水の畔の物語

バスは安定の1時間半遅れで下諏訪駅に到着。4年前の秋に諏訪湖の黄昏とトワイライトを見に来たときも1時間半遅れた。外国より時間感覚が酷い。唯一の救いは天気は良いがそこまで暑くないこと。湖風のおかげだ。 ハーモ美術館までの道のり ハーモ美術館の外観…

福岡市美術館〜日本美術館の未来

ジャコモ・マンズー《恋人たち》1977 名画を所蔵していても良い美術館とは限らないが、良い美術館にある絵画は名画である。目利、空間デザイン、展示が卓抜しているからだ。作品だけではなく空間、美術館もアーティスト。それを教えてくれるのが福岡市美術館…

アーティゾン美術館〜空間と作品

スポーツニッポンの校閲部でアルバイトしていた2014年から2016年までの3年間、東京駅は毎日の通勤駅だった。新宿から中央線で東京駅、京葉線に乗り換えて越中島へ。駅構内の移動が1キロ近くある巨大迷路。東京駅は人生の大事な中継点。 ミュージアムタワー京…

深谷シネマとマジェスティック、吉永小百合

映画より映画館のファンだ。生まれ育った奈良の地元には映画館がなく『ドラゴンボール』『ドラえもん』『ルパン三世』の新作が公開されると桜井市民会館に足を運んだ。 スクリーンの緞帳(どんちょう)には、大和の古地図が大きく描かれ、タイムスリップした…

松岡美術館〜麗しき均衡のミュージアム

奈良出身の田舎者なのに白金台に住む女性から好意を持たれることが2回あった。ひとりは名古屋出身の会社の上司。よくご飯に誘ってくれ、エヴェレストに行くため会社を退職したときは山の生活を詳しく調べ、大量のボディシートをくれた。かつては映画記者で泣…

山種美術館と日本の問題点

日本の美術館は二つに分かれる。アートを鑑賞する場所、アートを保管する場所。ひろしま美術館や東京富士美術館、山形美術館が前者。常設展示室が充実しているからだ。そのほかは所蔵品(コレクション)を買ったものの、自館での展示は少なく、ほとんどがレ…

東京富士美術館〜ラ・トゥールの奇跡

新宿から中央線に乗り八王子まで40分、西東京バスに乗り換え創価大学まで25分。ちょっとした小旅行の先にジャスティスな美術館がある。 東京富士美術館 常設展示室 アメリカン・フォトグラフス展 印象派モネからアメリカへウスター美術館所蔵 美術館メシ カ…

北海道立近代美術館と鳥獣戯画

前夜にエスコンフィールドで日本ハムvs.楽天戦を観て、翌朝11時に美術館に向かう。"動"のスポーツと"静"のアート。令和6年は徹底的にこの二刀流だ。 お世話になった新札幌駅内にあるアークシティホテルは静かで快適な一宿だった。穏やかな気持ちで向かえる。…

山形美術館〜川瀬巴水の記録と記憶

日本の美術展の良いところは東京で見逃した企画展でも、そのあと日本各地を旅していることだ。昨年に見逃した山下清の回顧展を先月に新潟で観たように、日本の美術館は後悔を救ってくれる。八王子美術館で川瀬巴水の版画展を見逃したときは激しく悔やんだが…

新潟県立近代美術館〜野に咲くミュージアム

修行は苦しいから、できればやりたくない。自分の場合は逆。日常が苦しくて苦しみを忘れるために苦しい修行をする。シジフォスの岩。日常の苦しみとはお金。毎月、健康保険料と都民税だけで10万円の支払い。物書きとしての作品づくりをしていると収入がない…

三重県立美術館:シュールの先へ

奈良をふるさとにする者にとって、三重は大阪や京都より馴染みが深い。車を走らせても景色が変わらないからいつの間にか三重にいる。大和の国の親戚のような土地。村でも町でもなく、その中間の日本語を創らないと表現できない。ヤマトタケルが旅をしたとき…

北欧の神秘:The Magic North:SOMPO美術館

絵画といえばヨーロッパである。フランス、オランダ、ベルギーといった西欧。スペイン、イタリアのある南欧。ドイツやイギリスも有名画家がいる。では北欧の画家と言われてパッと即答できるだろうか?よほどの美術好きでないと出てこない。そんな一隅を照ら…

ロートレック展〜SOMPO美術館

SOMPO美術館でロートレック展が開催されている。6月22日から9月23日まで。初日には100人以上が列をつくった。毎日SOMPO美術館の前を通るが、2週間以上たっても開館30分前から並んでいる。素描やポスターなど約240点が来日。この多さは贅沢。上野のデ・キリコ…

デ・キリコ展〜東京都美術館

"> ">上野はレンタカー屋さんの壁にも美術展のポスターが貼ってあるほど街がアートを抱擁する。JRの駅を出ると眼の前に上野公園。 広大な森を抜けないと、お目当ての美術館に着けない。その時間もアートの一部。 ちょうど台湾フェアを実施中。入りたかったが…

新宿タブロー:SOMPO美術館

来年の秋、美術に関する書籍を出すことになった。何枚もの絵画が〈あるかたち〉で登場する。難産を乗り越えこの世に産み落とした絵描きたちへの敬意を忘れてはいけない。はじめに現場ありき。これから1年間で30以上の美術館を巡る。第一弾は、此処から始めた…