ポーラ ミュージアム アネックスはポーラ銀座ビル3階にあるギャラリー。銀座一丁目という一等地でありながら、すべての企画展を無料で開放している。銀座一丁目駅を出てすぐだが、新宿から乗り換えが面倒くさい。山手線で有楽町駅まで行き8分歩く。
マティス ― 色彩を奏でる
ポーラ銀座ビル15周年を記念し、10月4日から10月27日(日)まで「マティス ― 色彩を奏でる」を開催。3日前に訪れたポーラ美術館にマティスの絵が一枚も無いと思ったら、銀座を旅行していた。
ポーラ美術館収蔵の《リュート》をはじめとした絵画5点、晩年の切り絵《ジャズ》を全20図展示。これを無料で開放しているのだから贅沢。作品はすべて50歳以降に描かれたもの。絵画はポーラ美術館の所蔵品。
油絵《音楽と花瓶》
トップバッターは54歳の作品。顔色の悪いほおづえをついた物憂げな女性。気だるそうな表情とポーズ。しかし背景はピンクの薔薇、服も華やか。もたれかかるテーブル?の黄色も明るい。華やかな背景を描くことで女性の憂鬱を際立たせている。太い二の腕がたくましい。この女性は、きっと大丈夫だ。
2番目は全体に麗しさが漂う。ウォン・カーワァイ『花様年華』のよう。オリエンタルなタイトルがついているが、ヨーロッパの朝そのもの。右手で頭を押さえているが、そこに苦悩はない。黄色の鮮やかな服が多幸感を表している。
3枚目は凡作。音楽も女性も色彩も中途半端。この20年後、マティスは変容する。74歳にしてマティスは脱皮する。
マティス67歳。かなり脱皮が進んでいる。襟巻はどうでもいい。ギンガムチェック。この女性の心の格子柄。青は愛しさ。黄は切なさ。ダークな服がマニッシュ。AKBの名曲のジャケットにして欲しかった一枚。秋元康はマティスを見て作詞したに違いない。この絵のセンターの女性が大島優子に見えた。
マティス74歳。20年前の凡作から完全に脱皮。男は70歳から。進化でも熟成でもなく脱皮。それが男の歳の重ね方。「色彩は音楽である」と言わんばかり。白の女性がリュートを奏で、花瓶の不自然に大きい葉が風車のように音色を部屋に広げる。壁の赤と模様は音の波紋。マティスによる女性讃歌。今回、最高の一枚。
切り絵《ジャズ》
77歳のマティスが作った挿絵本《ジャズ》の20点。
道化師とは音楽であると表現したマティスの感性。道化師のダンスは王様の音楽。
踊る女性は音符であり影。スポットライトを浴びることで黒光りする。ダンシング・クイーンはなんと孤独なのか。なんと孤高なのか。滞在時間5分。アートは善なる交通事故。一瞬でも衝撃を受けたら、よい後遺症が残る。さらばマティス。また逢う日まで。
美術館メシ
梵天
ポーラ銀座ビルでは銀座よろしく高級フレンチや高級中華、高級和菓子が堪能できるが、そんなお金はない。ポーラ銀座ビルを出て2分も歩くと銀座一丁目の交差点に庶民シュートのラーメン屋さんがある。超オシャレで高級セレビーの銀座ど真ん中。これ銀座の不思議。
超極細針麺、超あっさり出汁。異邦人のための中華そば屋さん。
ゆず薫る煮干し出汁の『和風ラーメン』950円。煮卵とチャーシューが異常にうめーじゃねえか。こりゃ銀座でやってける。隣の綺麗な金髪の一人旅お姉さんは、大盛りラーメンにコーラを頼んでいた。さすが銀座。