アートの聖書

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山種美術館と日本の問題点

山種美術館

日本の美術館は二つに分かれる。アートを鑑賞する場所、アートを保管する場所。ひろしま美術館東京富士美術館山形美術館が前者。常設展示室が充実しているからだ。そのほかは所蔵品(コレクション)を買ったものの、自館での展示は少なく、ほとんどがレンタル料を徴収して他館に貸し出している。やっていることは転売ヤーと変わらない。一方で、他館にも貸さず自館でも展示せず、倉庫にアートを眠らせる美術館もある。恵比寿駅の西口を出て渋谷川を渡り、長い坂道を登ると渋谷は谷の街だと実感できる。谷の声を聴け。昭和からある八百屋さんの隣に突如として現れる。

山種美術館

山種美術館はチケットを買うとアンダーグラウンドへ降りていく珍しい形式。

山種美術館

今回、観たのは『東山魁夷と日本の夏』の企画展。原田マハのファンの間で有名だ。好きな画家10人にも挙げ、好きな絵画トップ10にも東山魁夷の『道』を挙げる。

山種美術館

唯一、撮影OKの《緑潤う》1976年。輪郭線がなく、色合いは他の画家では出さない独自の力がある。しかし、それが良いかといえば別。山や海の自然の力、季節がもつ力を感じない。構図も心打たれるものがない。他にも10点以上が展示されているが、東山魁夷とは相性が良くなさそうだ。《道》は実際に観てみたい。

山種美術館

残念ながら良いと思った絵が一枚もなかった。強いて挙げるなら上村松園の《夕べ》だけ。作品の展示数が少ない。これで1400円は高い。そして若い女がひとり、監視員がいないことを狙ってスマホで写真を撮りまくっていた。注意しようかと思ったが、係員がj巡回しない、やる気のない美術館にアホらしくなった。竹内栖鳳《班猫》や速水御舟《炎舞》の重要文化財は倉庫で眠っている。アートは過保護すぎてもいけない。人に見られてナンボだ。1年にわずかの期間だけ展示されるなら、何のための所蔵品なのか。それなら常設展示してくれる他の美術館に売却してほしい。帰りに銭湯に寄った。恵比寿の住宅街にある改良湯。悪魔的にキンキンに冷えた水風呂、炭酸泉はちょうどいい温めの燗。なぜかバック・トゥ・ザ・フューチャーの音楽がガンガンに流れる不思議な空間。銭湯のほうが美術館より、よっぽどアートを理解していた。