アートの聖書

絵画、映画、ときどき音楽

映画について語るときに僕が語ること

去年の1月にTwitterを始めたとき、大学生の男性と相互フォローをした。映画が好きで、作品の解説をYouTubeにアップしていた。 その感想をTwitterにコメントすると「そんな見方があるんですね!」「その表現とても好きなので使わせてください!」と反応してく…

ランボー/ラストブラッド

シリーズ第1作『First Blood』の原題を、日本は『ランボー』と人物名のタイトルで上映した。 5作目の『ランボー/ラスト・ブラッド』はシリーズ完結篇であり、いよいよランボーとは何者なのか?を定義するタイミングである。 ミャンマーから故郷アリゾナの牧…

レヴェナント:蘇えりし者

『レヴェナント:蘇えりし者』は2010年代ナンバーワン映画である。監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは2位の『バードマン』と合わせての1、2フィニッシュで10年間を駆け抜けた。 映画が公開されたのは2016年の4月。半年後、登山家の撮影隊として…

八甲田山

映画『八甲田山』は、世界映画史において最高傑作の一つであり、クライマーにとっては呪いの映画である。 一コマたりとも無駄がなく、169分の上映時間は究極の凝縮であり、崇高なる昇華。 映画は人間が成し得る最大の饗宴であり、『八甲田山』がそう。 原作…

エヴェレスト 神々の山嶺

『エヴェレスト神々の山嶺』は自分の血だ。酷評を耳にすると、家族がバカにされたように感じてしまう。 あなたにだってあるだろう。他人事ではいられない、自分自身と呼べる一作が。 映画が公開された半年後の2016年9月、私はチベットの標高5900mで1ヶ月半…

ロートレック展

SOMPO美術館でロートレック展が開催されている。6月22日から9月23日まで。初日には100人以上が列をつくった。毎日SOMPO美術館の前を通るが、2週間以上たっても開館30分前から並んでいる。素描やポスターなど約240点が来日。この多さは贅沢。上野のデ・キリコ…

デ・キリコ展〜東京都美術館

"> ">上野はレンタカー屋さんの壁にも美術展のポスターが貼ってあるほど街がアートを抱擁する。JRの駅を出ると眼の前に上野公園。 広大な森を抜けないと、お目当ての美術館に着けない。その時間もアートの一部。 ちょうど台湾フェアを実施中。入りたかったが…

新宿タブロー:SOMPO美術館

来年の秋、美術に関する書籍を出すことになった。何枚もの絵画が〈あるかたち〉で登場する。難産を乗り越えこの世に産み落とした絵描きたちへの敬意を忘れてはいけない。はじめに現場ありき。これから1年間で30以上の美術館を巡る。第一弾は、此処から始めた…

悠久の水墨画〜雪舟伝説

西荻窪で傘が飛ばされ線路に入ってしまい中央線は30分以上の遅延。新宿駅は列車の到着を待つ人でおしくらまんじゅう。一抹の出来事が大パニックを巻き起こす。仕事に遅れて我先にと人混みを掻き分けるサラリーマン、おばあちゃん。京都に水墨画の雅趣を堪能…

真夜中のキャンドル〜代々木八幡公衆トイレ

明治通り、環七通りと並ぶ東京で有名な通り。首都高と並走し、品川区から板橋区までを結ぶ。東京では珍しいほど広い通り。B'zやGLAY、椎名林檎の作品にたびたび登場する。そんな山手通りにあるトイレが『代々木八幡公衆トイレ』である。 映画『PERFECT DAYS…

桜色の夕暮れ〜恵比寿公園トイレ

夜を待つ公園は寂しさに包まれる。一日を終えるひと、これから一日を始めるひと。夕暮れに霞み、あったかい晩ご飯にワクワクしながら家路につく。令和二年八月に完成した恵比寿公園トイレは行き交う人々と車の黄昏を見守っている。 「無」を凝縮した背中は一…

ノワールの世界

色彩は彩りをくれるが時に弊害となる。星の光は暗闇でないと姿を見せないように、モノクロにすることで輝くものがある。 ヴィム・ヴェンダース監督の『The Salt of the Earth』は写真家のセバスチャン・サルガドに照明を当てたドキュメンタリー。ブラジル人…

ルージュの伝言♯東三丁目公衆トイレ

岡本太郎は言った。「昼は太陽、夜は宇宙」 The Tokyo Toiletは時間のアート。昼と夜では表情、温度が違う。【十七才の地図】で11番に訪れたのが東三丁目公衆トイレ。 最初に捉えるのが赤。アートは形の前に色が襲いかかる。赤と闇。よりレッドが強調される…

十七才の地図〜THE TOKYO TOILET

新宿の摩天楼に暮らしていると、高層ビルや空を見上げてばかり。つい足元を失ってしまう。40歳を超えてからトイレに行く回数が増えた。昔はトイレに居るひとりの時間が好きだった。8年前にエヴェレストに1ヶ月いたときは、下山して何より感動したのがホテル…