アートの聖書

絵画、映画、ときどき音楽

ロートレック展

SOMPO美術館でロートレック展が開催されている。6月22日から9月23日まで。初日には100人以上が列をつくった。毎日SOMPO美術館の前を通るが、2週間以上たっても開館30分前から並んでいる。素描やポスターなど約240点が来日。この多さは贅沢。上野のデ・キリコ展と同じく、一人の画家の作品だけで展覧会をするのは珍しい。

ロートレック展 時をつかむ線

アンリ・ド・トゥールーズロートレックは梅毒やアルコール依存症などを患い、脳出血により36歳で没したフランスの画家。Kindleの画集を持っており、タブローは好きだが、ポスターに関しては1枚も好きなものがなかった。果たして印象が変わるか。各階で撮影OKの作品がある。全部で6枚くらい。企画展名が「時をつかむ線」となっているが、あまり感じない。

4階へ降りる階段の壁には作品を模ったPOPの案内。キャバレーの音楽が鳴り、面倒くさい下山の気分を和らげてくれる。

企画展のメインビジュアルは3階に集結。

《ジャヌ・アヴリル》1893年

《ジャヌ・アヴリル1893年

《ディヴァン・ジャポネ》1893年

《ディヴァン・ジャポネ》1893年

東洲斎写楽の大首絵は誇張することでスケール感を出し、見事にリアルを超えた。ロートレックは生々しい肉感を消している。魔女のよう。アニメキャラの先駆けであり、人物に匂いがない。写実が持っている重力からの自由。

美術館のポスターには「ほら、劇場(キャバレー)の喧騒が聞こえる」とあるが、ロートレックのポスターには音がない。もっと自由だ。絵に重力がない。だからポスターとしては受け入れやすい。日常中で、街の中で観たら、もっと真価がわかっただろう。ポスターはパブリックアートなのだから。

来日していないロートレックの絵画

《ムーラン通りの医療検査》1894年

ロートレックは娼婦といった世間から差別されている職種の人々を描いてきた。仕事の様子ではなく、それ以外の時間。日常を描いた。ありのままの生命力を描いた。娼婦の仕事を賛美するのではなく、きちんと人間として扱う。それが真のアートであると教えてくれる。

ゴッホの肖像》1887年

ロートレックが描いたゴッホ肖像画が素晴らしい。画家でも狂人でもなく、ありふれたひとりの青年を描いているからだ。来年の春にオランダに行くとき、アムステルダムゴッホ美術館で逢えるのを愉しみにしている。

美術館メシ

三時のおやつにミュージアムカフェ《Café Du Musée》。キャメルラテ+レモンケーキ600円。次にカフェに来るのは10月。『カナレットとヴェネツィアの輝き』で逢おう。