アートの聖書

美術館巡りの日々を告白。美術より美術館のファン。

自画像

藤田嗣治《自画像》〜針と筆のあいだ、縫うように描く、禅としてのアート

作者:藤田嗣治 制作:1929年 寸法:62.0 x 43.0 cm 技法:水彩、墨、絹本 所蔵:ポーラ美術館(箱根) パリ時代の藤田嗣治が描いた自画像。白いシャツをまとい、胡坐をかいて布を縫う姿は、座禅を組む僧侶のようである。針と糸を手に、布に意識を沈める眼差…

ピカソ〈自画像〉という人生〜なぜ最後まで“自分”を描いたのか?

パブロ・ピカソ《自画像》1917年、紙、鉛筆 パブロ・ピカソは絵の道を歩み始めた10代から亡くなる90代まで自画像を残しており、ピカソほど「自画像」で人生を語れる画家はいない。15歳の少年期から、死の数か月前・91歳の最晩年まで。その筆跡には、青年の焦…

ピカソ《アフリカ時代の自画像》〜形を溶かす火、世界を刻む原始の刃

【作品解説】ピカソ《自画像》(1907/油彩・カンヴァス/ナロドニー・ギャラリー)——“アフリカ彫刻の時代”に差し掛かった刃物のような線で、顔を描くのではなく彫り起こす。土と鉄の記憶を帯びた緑・黒・赤が体温の余熱を残し、背後の灼けるオレンジが内な…

パブロ・ピカソ《死に直面する自画像》〜異界で描いた最後の魂、最期のキャンバスは、あの世だった

英題:Self-portrait Facing Death 作者:パブロ・ピカソ 制作:1972年7月 寸法:65.7×50.5 cm 技法:紙、鉛筆 所蔵:不明 パブロ・ピカソが1972年7月、91歳で描いた最後の自画像。タイトルは《死に直面する自画像》。肉体の終わりを目前にしながら、なお“描…

藤田嗣治《自画像》〜茶目っ気と品格、ユーモアと夢、名刺代わりの一枚

【作品解説】藤田嗣治《自画像》(1929/油彩・カンヴァス/東京国立近代美術館)——おかっぱ頭・丸縁眼鏡・口髭・絵筆・猫・乳白色の女性像…“藤田らしさ”を一枚に凝縮したセルフブランディングの極致。鋭い視線と少し気取った表情に、机上の筆・硯やしわ寄る…

ピカソ《俺はピカソ》〜色彩に刻まれた19歳の鼓動

【作品解説】ピカソ《Yo, Picasso》(1901)。“青の時代”直前の19歳による自画像。カサジェマスの死の余韻を帯び、荒い筆致と強い対比色で自我の震えを刻む。1989年サザビーズで当時最高の4,785万ドル落札。

パブロ・ピカソ《18歳の自画像》〜迫りくる未完成の魂

【作品解説】ピカソ《自画像》(1900/木炭・紙/ピカソ美術館バルセロナ)——18歳、貧困と絶望のパリで描かれた小品。粗い線と黒い影が精神の震えをそのまま刻み、熱い背景の炎と冷たい眼差しが激しくぶつかる。未完成のまま燃えるような真実を抱いた、自我…

パブロ・ピカソ《15歳の自画像》〜ガラスの十代の瞳、未来を射抜く

英題:Self-Portrait 別題:髪をとかしていない自画像 作者:パブロ・ピカソ 制作:1896年 寸法:32.7 x 23.6 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ピカソ美術館(バルセロナ) ピカソの一家は1895年に港湾都市のラ・コルーニャからバルセロナに移住し、バルセ…

パブロ・ピカソ《パレットを持つ自画像》〜華やぎを拒み、存在を刻む

英題: Self-Portrait with Palette 作者:パブロ・ピカソ 制作:1906年 寸法:91.9 x 73.3 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:フィラデルフィア美術館(アメリカ) ピカソの「バラ色の時代」の末期に描かれ、この時代の唯一と言っていい自画像。容姿はピカソ…

アルブレヒト・デューラー《自画像》〜神を映す鏡、正面から世界を見据える

【作品解説】アルブレヒト・デューラー《自画像〈28歳〉》(1500)——正面性と左右対称で「ヴェラ・イコン」を想起させ、自らを神的創造者になぞらえる宣言的な肖像。黒い背景に毛皮と巻き毛が浮かび、右上の碑文「不滅の色彩で描いた」が永遠性への意志を刻…

レンブラント《自画像》の軌跡〜若き炎から黄昏の微笑へ、光と影のセルフポートレート

《何かを見つめる自画像》1630年、アムステルダム国立美術館 17世紀のオランダ黄金時代を代表する画家であり、史上最高の画家であるレンブラントは、生涯で60枚ほどの自画像を描いた。 モデルを雇う金がない画家は、練習や技法の実験などで自画像を描くこと…

レンブラント《使徒パウロに扮した自画像》〜聖人と凡人の間で、光に浮かぶ老いと自負

英題:Self-Portrait as the Apostle Paul 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1661年 寸法:91 cm × 77 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:アムステルダム国立美術館(オランダ) レンブラント55歳頃の自画像。『新約聖書』の著者の1人である聖パウロ…

レンブラント《大きな自画像》〜素のままで主役、光も影も飲み込んで、顔だけで勝負

英題:Large Self-Portrait 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1652年 寸法:112.1 cm × 81 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ウィーン美術史美術館(オーストリア) 1645年を最後に、自画像を描かなくなったレンブラントが7年ぶりに描いたセルフ・…

レンブラント《ベレー帽と立襟の自画像》〜顔面一発勝負、沈黙のラスボス感、絵に宿る不屈の視線

英題:Self-Portrait with Beret and Turned-Up Collar 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1659年 寸法:84.5 cm × 66 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ワシントン・ナショナル・ギャラリー 《ベレー帽と立襟の自画像》は、レンブラントが破産し、…

レンブラント《52歳の自画像》〜敗れてなお主演、炎上も破産も超えて

英題:Self-Portrait 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1658年 寸法:133.7 cm × 103.8 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:フリック・コレクション(ニューヨーク) レンブラントが52歳頃、アムステルダムの自宅や家財道具、収集した芸術品が競売に…

レンブラント《売春宿の放蕩息子》〜リア充爆発ラブラブ夫婦の記念写真

英題:The Prodigal Son in the Brothel 別題:居酒屋の放蕩息子、放蕩息子としてのレンブラントとサスキア 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1637年頃 寸法:161 cm × 131 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵: アルテ・マイスター絵画館(ドイツ) …

レンブラント《ベルベットのベレー帽を被った自画像》〜未来を試写する、巨匠になる前のオーディション

英題:Self-Portrait with a Velvet Beret 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1634年 寸法:58.4 cm × 47.7 cm 技法:油彩、板 所蔵:ベルリン絵画館(ドイツ) 最初の妻サスキアと結婚した年に描かれた28歳頃の自画像。奥さんと一緒のコスプレ絵画…

レンブラント《笑う自画像》〜闇を破る笑み、口角ひとつで時代を縮める

英題:Rembrandt Laughing 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1628年頃 寸法:22.2 x 17.1 cm 技法:油彩、板 所蔵:J・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス) レンブラント22歳頃、初期の自画像。光と影のキアロスクーロ(明暗法)を駆使していた自…

レンブラント《首当てをつけた自画像》〜闇を切る白、影に溶け、光で名乗る

英題:Self Portrait with gorget 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1629年頃 寸法:38.2 cm × 31 cm 技法:油彩、オーク板 所蔵:ゲルマン国立博物館(ドイツ) レンブラントが23歳前後、まだ故郷のライデンにいる頃に描いた自画像。キアロスクー…

レンブラント《アトリエの画家》〜若き登攀 風車へ突っ込む筆、ドン・キホーテのアトリエ

英題:The Artist in his Studio 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1628年頃 寸法:24.8 cm × 31.7 cm 技法:油彩、板 所蔵:ボストン美術館(アメリカ) 22歳ごろのレンブラントが描いた最初期の自画像の一つ。 右手に絵筆、左手にはパレット。そ…

レンブラント《若き日の自画像》〜闇から生まれる顔、影が人をつくる夜明け前

英題:Self-Portrait at an Early Age 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1628年 寸法:22.6 cm × 18.7 cm 技法:油彩、オーク板 所蔵:アムステルダム国立美術館(オランダ) 22歳頃のレンブラントが描いた初期の自画像。弟子の作品という意見もあ…

レンブラント《34歳の自画像》〜闇を背景に、自信だけを照らす、光で削り、絵肌で積む

英題:Self portrait at the age of 34 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1640年 寸法:91 cm × 75 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ロンドン・ ナショナル・ギャラリー ボディビルダーのように右腕を誇示し、自信と誇りを画面いっぱいに叩きつけ…

レンブラント《帽子と二本の鎖を被った自画像》〜鎖より重いまなざし、金のきらめき、影の確信

英題:Self-portrait wearing a beret and two chains 別題:ベレー帽と二本の鎖をつけた自画像 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1642年 寸法:72 cm × 55 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ティッセン=ボルネミッサ美術館(スペイン) 《夜警》…

レンブラント《イーゼルのある自画像》〜闇に立ち、絵画という炎を手放さず

英題:Self-Portrait at the Easel 別題:画架の前の自画像 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1660年 寸法:111 cm × 85 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ルーヴル美術館(パリ) レオス・カラックスの映画『ポンヌフの恋人』で、画学生ミシェルが…

レンブラント《笑う自画像》〜失うことを背負う笑み、ゼウクシス黄金の顔

原題:Zelfportret als Zeuxis(オランダ語) 英題:Self-Portrait as Zeuxis 別題:ゼウクシスとしての自画像 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1668年頃 寸法:82.5 cm × 65 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ヴァルラフ・リヒャルツ美術館(ドイ…

レンブラント《二つの円のある自画像》〜創造神の肖像、宇宙を背にした画家

原題:elfportret met twee cirkels(オランダ語) 英題:Self-Portrait with Two Circles 別題:パレットと絵筆をもつ自画像 作者:レンブラント・ファン・レイン 制作:1665年〜1669年 寸法:114.3 cm × 94 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ケンウッド・…

ダリ《『リュマニテ』紙のある自画像》〜新聞と仮面のあいだ、時代のスクラップ

英題:Self-portrait with L'Humanité 作者:サルヴァドール・ダリ 制作:1923年 寸法:105 x 75 cm 技法:厚紙にテンペラ、油彩、コラージュ 所蔵:ダリ劇場美術館(スペイン) 1923年、マドリードの王立サン・フェルナンド美術学校に在学中の19歳のダリが…

ゴッホ《髭のない自画像》〜青春の影を刻む93億円の孤独

原題:Self-portrait without beard 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1889年9月 寸法:65 × 54 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:個人蔵 サン=レミの精神病院で療養していた時期に描かれた自画像で、同時期の《渦巻く青い背景の中の自画像》と、…

ゴッホ《渦巻く青い背景の中の自画像》〜青の渦に燃える孤独

原題:Portrait de l'artiste 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1889年9月 寸法:65x54cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:オルセー美術館(パリ) ゴッホの象徴的な自画像のひとつ。背景も服も顔も、すべてが荒れ狂う海のように渦を描いている。 ア…

ゴヤ《わたしはまだ学ぶ》終焉を突き破る意志、創造の炎は滅びず

原題:Aun Aprendo(スペイン語) 英題:I Am Still Learning 作者:フランシスコ・デ・ゴヤ 制作:1826年頃 寸法:19.2 x 14.5 cm 技法:黒鉛筆、リトグラフ鉛筆、灰色の紙 所蔵:プラド美術館(スペイン) 1825年から28年頃に制作されたこの素描は、80歳前…