- 英題:Self-Portrait
- 作者:レンブラント・ファン・レイン
- 制作:1658年
- 寸法:133.7 cm × 103.8 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵:フリック・コレクション(ニューヨーク)
レンブラントが52歳頃、アムステルダムの自宅や家財道具、収集した芸術品が競売に出され、全財産を失った1658年に描かれたもの。
若い頃の「俺イケてるだろ?」とポーズを決めたセルフィー感とは違う。すでに破産も喪失も経験し尽くした老人の姿だが、妙に堂々としていて、役者めいている。
ゆったりした黄金色の衣をまとい、腰には赤い帯。手には杖を持ち、片手を腰に置いてこちらを見ている。そのポーズは「敗れてもなお主役」の風格がある。豪奢な服装といっても、絵の具の厚塗りで質感を作り出しているだけで、実際に着ていたかは怪しい。これはコスプレ自画像。自分を王のように、舞台俳優のように演出している。
面白いのは、その顔つき。威厳と疲労、ユーモアと諦観が全部入り混じっている。笑っているのか、疲れているのか、判別できない。だがそれこそがレンブラントの狙いで、鑑賞者に「あなたはこの男をどう見る?」と問いかけてくる。
顔には疲れや老いが刻まれているが、それと同時に茶目っ気のような自負も漂う。笑っているのか、達観しているのか判別できないが、その曖昧さがむしろ彼の人間味を強調している。つまりこの絵は「衰えた巨匠」ではなく、「まだ舞台に立ち続ける男」の姿だ。若い頃は「プロフィール写真」、中年期は「炎上セルフィー」、そして晩年に向かっていく。
これはレンブラントのシーズン後半のビジュアルポスター。キャリアの山も谷もくぐり抜けて、スクリーンに立つ“ベテラン俳優”の宣材だ。観客に「俺の物語はまだ終わっていない」と伝えている。
この自画像は“最終章”ではなく、「まだ続く舞台の中盤以降の見せ場」。人生の光と影を飲み込みながら、最後まで観客を惹きつけるスターの姿をレンブラントは描き出している。
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