
- 英題:Self-Portrait
- 作者:パブロ・ピカソ
- 制作:1907年
- 寸法:56 cm × 46 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵:ナロドニー・ギャラリー(チェコ)
ピカソが「アフリカ彫刻の時代」に踏み入った頃の自画像。輪郭線は震える刃のように走り、大きな目や鼻は、彫刻刀で削り出された断層のように浮かび上がる。描くというよりも、己の顔を掘り進め、形の奥に潜む何かを掘り当てようとするように思える。
色は土と鉄の記憶を宿す。くすんだ緑、焼け焦げた黒、そして頬や鼻先にかすかに残る赤。冷たくなりかけた体温の最後の余熱が、そこに灯っている。背景の熱いオレンジは、溶鉱炉の火。画家の内部で何かが燃え、古い形を溶かし、新しい美の鉱石を生もうとしている。
ピカソは、ここで「自分」を描こうとしてはいない。その瞳の奥には、まだ見ぬ未来の絵画が潜んでいる。自らをモデルにして、世界を削り直し、美術の歴史そのものを組み替えようとしている。その刃の先に、20世紀の光がちらりと閃く。
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