アートの聖書

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レンブラント《笑う自画像》〜闇を破る笑み、口角ひとつで時代を縮める

レンブラント《笑う自画像》

  • 英題:Rembrandt Laughing
  • 作者:レンブラント・ファン・レイン
  • 制作:1628年頃
  • 寸法:22.2 x 17.1 cm
  • 技法:油彩、板
  • 所蔵:J・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス)

レンブラント22歳頃、初期の自画像。光と影のキアロスクーロ(明暗法)を駆使していた自画像と異なり、顔をハッキリ見せている。

斜に構えた得体の知れないポーズ、薄気味悪い『ダークナイト』のジョーカーのような薄ら笑い、おでこのテカリ。色は黒く、色彩も少ないのに存在感がすごく、レンブラントの凄さを物語る一枚。

若いレンブラントがこちらに向かって、声の出ない笑いを放つ。この小さな板面は、礼儀作法の肖像ではなく、生の瞬間の記録になっている。

歯は一本一本描かない。薄い白の斑を置き、口腔の影と上下の唇の湿りで“笑いの開口”を作る。首当て(ゴルジェット)は鏡のように光を跳ね返し、顎下の影を切り、顔をぐっと前へ押し出す即席の照明だ。

この絵の凄さは、技巧の誇示ではなく、見る側の身体を巻き込む力に尽きる。斜めに傾いた頭、細くつり上がる目尻、口角の上がり方。わずかな差分が積み重なって、四百年の距離を、笑いひとつで縮めてしまう。

光と絵具でここまで“今”を生かすことができるのだと、レンブラントは教えてくれる。

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