アートの聖書

美術館巡りの日々を告白。美術より美術館のファン。

ゴッホ

ゴッホと「耳なしの自画像」(包帯をした自画像)〜事件と芸術が交錯する瞬間

《包帯をした自画像》1889年1月、コートールド・ギャラリー ゴッホが残した約38点の自画像のうち、最も有名な一枚は、アルル時代に描かれたものである。理由は絵画的に優れていることに加え、あまりにも有名な「耳切り事件」が絡んでいるからである。 ゴッホ…

ゴッホ《皿とタマネギのある静物》〜この夜を越えるための、一皿、花の代わりに、今日を置いた

原題:Stilleven rond een bord met uien 英題:Still Life with a Plate of Onions 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1889年1年 寸法:49.5 × 64.4 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:メトロポリタン美術館(ニューヨーク) 1889年、サン=レミの療…

ゴッホ《初歩き》〜未来に手を伸ばす小さな足音

英題:First Steps, after Millet 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1890年 寸法:72.4 x 91.1 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:メトロポリタン美術館(ニューヨーク) 1889年から1890年の秋から冬にかけて、サン=レミの精神病院で自発的に入院し…

ゴッホ《サン=レミの精神病院の庭》〜再生庭園、心が芽吹く音がする

原題:De tuin van de inrichting in Saint-Rémy 英題:The Garden of the Asylum at Saint-Rémy 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1889年5月 寸法:91.5 × 72 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:クレラー・ミュラー美術館(オランダ) アルルでの耳…

《花咲くアーモンドの木の枝》ゴッホが贈った世界、祝福は青空に咲いた

原題:Almond Blossom 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1890年2月 寸法:73.3 cm x 92.4 cm 技法:油絵、カンヴァス 所蔵:ゴッホ美術館(オランダ) ゴッホ、最高傑作。依頼者のためでも、自分自身のためでもない。愛する弟テオとその妻、そして…

ゴッホと素描の世界〜色彩の爆発はここから始まった、絵画以前にして絵画以上

11歳のゴッホが父の誕生日にプレゼントした素描 素描の魅力は、完成した作品では見えにくい作者の思考や筆の跡がそのまま伝わる親密さにあり、さらに創造の流れや着想の瞬間を覗き見るような生々しさにある。素描(そびょう)とは、木炭や鉛筆、ペンなどの単…

《ジャガイモを食べる人々》ゴッホの手、農婦の手、土に生きた絵画

蘭題:De Aardappeleters 英題:The Potato Eaters 別題:じゃがいもを食う人々、馬鈴薯を食う人々 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1885年4月 寸法:82cm × 114cm 所蔵:ゴッホ美術館(オランダ) ゴッホがオランダのニュネン村に滞在した時代の…

ゴッホ《夜のカフェテラス》〜夜明けを待つ夜光浴、世界はカフェから始まる

原題:Place du Forum(フランス語) 英題:Terrace of a Café at Night 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1888年9月16日 寸法:80.7 × 65.3 cm 所蔵:クレラー・ミュラー美術館(オランダ) ゴッホの代表作の中でも、《ひまわり》《星月夜》と並び…

100年に一度の「大ゴッホ展」〜夜のカフェテラスとアルルの跳ね橋、クレラー・ミュラー美術館、全力投球

3つの大きな個展が開催される"ゴッホ・イヤー"の2025年。箱根ポーラ美術館の『ゴッホ・インパクト』、大阪市立美術館で幕を開けた『ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢』、そして大トリを飾るのが神戸市立博物館から始まる『大ゴッホ展』である。 2026年と2027…

ゴッホ《アルルの跳ね橋》洗濯する人々、静かな空、未完成という幸福

原題:Pont de Langlois(フランス語) 英題:The Langlois Bridge at Arles 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1888年3月 寸法:54 × 64 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:クレラー・ミュラー美術館(オランダ) ゴッホがアルルに到着した翌月、ア…

ゴッホ《レストランの内部》〜点描が奏でる静寂の舞踏

原題:Interieur van een restaurant 英題:Interior of a Paris Restaurant 別題:《レストランの室内》 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1887年夏 寸法:45.5 cm x 56 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:クレラー・ミュラー美術館(オランダ) ゴ…

ゴッホの人生、炎の画家の壮絶なる生涯と伝説

パリ時代のゴッホと思われる写真 ゴッホはわずか37年の生涯で800点以上の絵画を残し、その間に37回もの引っ越しを繰り返したといわれている。まさに風来坊、異邦人、ヴァガボンド(放浪者)としての画業だった。出会う人々や景色に触れるたびに、その画風も…

ゴッホの代表作・有名絵画〜夜空と黄色が語る、魂の風景

SOMPO美術館のゴッホ《ひまわり》 ゴッホの絵に触れると、美術は「ガリ勉するもの」ではないと気づかされる。探し、誘われ、近づき、そして愉しむものだ。 ゴッホが見ている対象や形式は、我々と同じ。しかし、描かれた絵は固定観念を裏切る。その瞬間、何か…

ゴッホ《木の根》〜最期の朝、地面は呼吸した

原題:Tree Roots 邦題:木の根と幹 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1890年7月 寸法:50.3 cm x 100.1 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ゴッホ美術館(オランダ) 現在、ゴッホの遺作とされている絵画。死の前日の朝に描いたとされている。 《木…

ゴッホのオーヴェル時代〜炎の画家、最期の70日

ゴッホ《オーヴェルの家々》1890年5月、ボストン美術館 パリ北西の小村、オーヴェル=シュル=オワーズ。ゴッホはここで最期の約70日を生き、ほぼ一日一枚の速さで《オーヴェルの教会》をはじめとする傑作を描き出した。ラヴー旅館の屋根裏部屋を出れば、青…

ゴッホ「サン=レミ」時代〜修道院の窓から世界は渦を巻く、祝福は窓辺に

ゴッホ《精神療養院の廊下》1889年9月、ニューヨーク近代美術館 ゴッホの生涯を振り返ると、「サン=レミ時代」は特別な輝きを放つ。1889年5月から1890年5月までの1年間、南仏サン=レミの精神病院(もとは修道院)で療養生活を送った。当初は3ヶ月の予定だ…

ゴッホの自画像〜鏡に宿る魂、己を描き、世界を変える

ゴッホの自画像の素描 鏡に向かい、己を描き続けた画家がいる。わずか4年のフランス滞在のあいだに、ゴッホは約38点もの自画像を残した。 そこには、模索する若き芸術家の姿もあれば、孤独と狂気に揺れる魂もある。パリの沈黙、アルルの光、サン=レミの渦。…

ゴッホ《髭のない自画像》〜青春の影を刻む93億円の孤独

原題:Self-portrait without beard 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1889年9月 寸法:65 × 54 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:個人蔵 サン=レミの精神病院で療養していた時期に描かれた自画像で、同時期の《渦巻く青い背景の中の自画像》と、…

ゴッホ《渦巻く青い背景の中の自画像》〜青の渦に燃える孤独

原題:Portrait de l'artiste 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1889年9月 寸法:65x54cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:オルセー美術館(パリ) ゴッホの象徴的な自画像のひとつ。背景も服も顔も、すべてが荒れ狂う海のように渦を描いている。 ア…

ゴッホ《アルルの病院》〜安らぎを探す眼差し、祈りの中庭、沈黙の病棟

原題:Garden of the Hospital in Arles 邦題:アルルの病院の中庭 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1889年4月 寸法:73.0 cm × 92.0 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:オスカー・ラインハルト・コレクション(スイス) 1888年12月23日、ゴーギャ…

ゴッホ《アルルの女(ジヌー夫人)》〜アルルに咲く気品、頬杖の優雅さ、母なる眼差し

原題:L'Arlésienne (Portrait of Madame Ginoux) 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1890年2月 寸法:65.3 × 49 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:クレラー・ミュラー美術館(オランダ) ゴッホがアルル時代に通っていた夜のカフェ「カフェ・ド・ラ…

ゴッホ《日没の柳》が映す生命の炎、燃え尽きる夕陽、甦る大地

原題:Pollard Willows at Sunset 別題:夕暮時の刈り込まれた柳 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1888年3月 寸法:31.6 × 34.3 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:クレラー・ミュラー美術館(オランダ) アルルに到着して間もなく、ゴッホは新たな…

ゴッホ《パシアンス・エスカリエの肖像》〜太陽と土の肖像、大地とともに生きる眼差し

原題:Portrait de Patience Escalier 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1888年8月 寸法:69×56cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:個人蔵 ゴッホがアルル時代に描いた農夫の肖像画の傑作。 パシアンス・エスカリエ(Patience Escalier)はアルル近郊…

ゴッホのアルル時代〜光と狂気の町、ゴッホを生んだ南仏の光

《タラスコンへの道を行く画家》1888年7月 ゴッホがもっとも多くの傑作を生み出したのは、南仏アルルで過ごした1年余りの期間だった。パリでの刺激的な日々を経て、ゴッホはより強い光と鮮烈な色彩を求めて地中海の太陽の下へ向かう。アルルはゴッホにとって…

ゴッホ《カフェ・タンブランの女》〜赤い羽根に刻まれたリスペクト、日常と芸術の交差点

原題:In the Café: Agostina Segatori in Le Tambourin 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1887年1〜3月 寸法:55.5 cm x 47 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ゴッホ美術館 ゴッホがパリ時代に描いた女性の肖像画。モデルはパリで「カフェ・タンブ…

ゴッホのパリ時代〜浮世絵、印象派との出会いと画風の変化

ゴッホの画風、色彩が大きく変化するのがパリ時代である。ゴッホは1886年3月1日、夜行列車に乗ってテオのもとへ向かった。勝手にアパートに転がり込み、モンマルトルにあるフェルナン・コルモンの画塾に通う。 テオの紹介でゴーギャン、ロートレック、シニャ…

《アルルの寝室》ゴッホの眠れぬ夢の部屋、記憶の中のオモチャ箱

原題:La Chambre à Arles(フランス語) 蘭題:Slaapkamer te Arles 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 別題:ファン・ゴッホの寝室、ゴッホの寝室、アルルの部屋 制作:1888年10月 寸法:72 cm × 90 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ゴッホ美術館(オラ…

《ゴッホの椅子》〜不在を描いた肖像、誰も座らぬ椅子に、画家は生きている

原題:Van Gogh's Chair(英語) 別題:ファン・ゴッホの椅子 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1888年11月 寸法:92 cm × 73 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ロンドン・ナショナル・ギャラリー ゴッホが1888年11月に南仏アルルで描いた「不在の…

ゴッホ《黄色い家》〜陽だまりに立つ孤独、夢は地面からはじまる

原題:The Street(The Yellow House) 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1888年9月 寸法:76 cm × 94 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ゴッホ美術館(オランダ) 「黄色い家」として親しまれている代表作。ただし、ゴッホ自身はタイトルを「The S…

ゴッホ《タンギー爺さん》背景に魂を、麦わら帽に祈りを

原題:Le Père Tanguy(フランス語) 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 制作:1887年夏(パリ時代) 寸法:92 cm × 75 cm 所蔵:ロダン美術館(フランス) 世界で最も有名な「おじいさん」の肖像画。誰も会ったことがないのに、誰もが親しみを持つ。テオ…