アートの聖書

美術館巡りの日々を告白。美術より美術館のファン。

スペイン

パブロ・ピカソ《女あるいは水夫の胸像(「アヴィニョンの娘たち」のための習作)》〜仮面の奥に、血の温度が残っている

英題:Bust of a woman or a Sailor (study for Les Demoiselles d'Avignon") 作者:パブロ・ピカソ 制作:1907年 寸法:53.5 x 36.2 cm 技法:油彩、厚紙 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) ピカソがピカソになった記念碑であり、キュビズム(立体派…

《アヴィニョンの娘たち》〜ピカソが召喚した五次元エル・ドラド、世界の裂け目がこちらを見ている

原題:Les Demoiselles d'Avignon 作者:パブロ・ピカソ 制作:1907年 寸法:243.9x233.7cm 技法:油彩,カンヴァス 所蔵:ニューヨーク近代美術館 ピカソがピカソになった記念碑。アフリカ美術の時代、そしてキュビズム(立体派)の黎明を告げる作品として…

パブロ・ピカソ《母と子ども》〜赤い顔に宿る、母という重さ

英題:mother and child 作者:パブロ・ピカソ 制作:1907年 寸法:81×60cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) ピカソが画風を変え、「バラ色の時代」から「アフリカ彫刻の時代」に入る1907年の夏に描かれた一枚。誰を描いたの…

ピカソ《コリーダ:闘牛士の死》〜筆はピカドールの槍、レイジング・ブルと白い運命

原題:Corrida : la mort du torero 英題:Bullfight:The Death ob the Torero 作者:パブロ・ピカソ 制作:1933年9月19日 寸法:31 × 40 cm 技法:油彩,木板 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) 10万点を超える芸術作品を生み出したといわれるパブロ…

パブロ・ピカソ《ボンボン帽子と柄ブラウスを着た女の肖像》〜ひとつの顔に、ふたつの温度

英題:Woman in a Hat with Pompoms and a Printed Blouse 作者:パブロ・ピカソ 制作:1962年 寸法:62.9 x 53 cm 技法:リノリウム版画 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) 80歳を過ぎたピカソが描いた晩年の版画。1958年ごろから熱心に版画に取り組…

パブロ・ピカソ《室内のフクロウ》〜閉じた部屋にいる小さな夜

原題:Hibou à l'intérieur 作者:パブロ・ピカソ 制作:1946年 寸法:81×100cm 技法:板 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) 長い戦争が終わり、1940年代後半にピカソは、南仏のヴァロリスに移り住む。ピカソといえば、鳩を愛したことで有名だが、フク…

パブロ・ピカソの代表作・有名絵画の傑作選〜20世紀のアートを変えた革命家

パブロ・ピカソ(1881–1973)は、スペインが生んだ20世紀最大の芸術家にして、美術の歴史を塗り替えた革命家。 青の時代、バラ色の時代、キュビスム、新古典主義、シュルレアリスム。 そのどれにも囚われることなく、あらゆる表現を行き来しながら、新たなア…

パブロ・ピカソ《トラックの玩具で遊ぶ子ども》〜子どもというジャングル、おもちゃと原始の生命

英題:Child Playing with a Toy Truck 作者:パブロ・ピカソ 制作:1953年 寸法:130x96.5cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) ピカソが72歳になる1953年に描かれた晩年の作品。ピカソは70歳を過ぎてから、「子どものよう…

パブロ・ピカソ《アルルカンに扮したパウロ》〜まだ地上に届かない足で、子どもは世界を見ている

原題:Paul en Arlequin 作者:パブロ・ピカソ 制作:1924年 寸法:130x97.5cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) ピカソが「新古典主義の時代」に描いた、息子パウロの絵画。1921年、ピカソの最初の妻オルガ・コクローヴァ…

パブロ・ピカソ《女の胸像(「アヴィニョンの娘たち」のための習作)》〜未完成なのに、だから妙に生きている

原題:Buste de femme (étude pour "Les Demoiselles d'Avignon") 作者:パブロ・ピカソ 制作:1907年 寸法:58.5 x 46.5 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) ピカソがピカソになった記念碑であり、キュビズム(立体派)の黎…

パブロ・ピカソ《読書》〜本を開いたら、人間がバラバラになった

原題:La Lecture 作者:パブロ・ピカソ 制作:1932年 寸法:130 x 97.5 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) 当時50代前半だったピカソが「シュルレアリスムの時代」に描いた一枚。モデルは22歳の愛人マリー=テレーズ・ワル…

ピカソ《夢》〜紫の静寂に宿るもの、六本目の指と、見えない命

原題:Le Rêve(The Dream in French) 作者:パブロ・ピカソ 制作:1932年 寸法:130×97cm 技法:油彩 所蔵:個人蔵 ピカソが50歳前後、「シュルレアリスムの時代」に描いた一枚。モデルは22歳の愛人マリー=テレーズ・ワルテールといわれる。多くの美術史…

ピカソ『青の時代』〜静寂の深海に潜む光、ブルー・ピカソが描いた青の宇宙

10万点を超える芸術作品を生み出したパブロ・ピカソの絵画のなかで「最も美しいページ」と称されるのが「青の時代」、いわゆる「ブルー・ピカソ」である。 ピカソの「青の時代」は、「ブルー・ピリオド」または「ブルー・ピカソ」とも呼ばれ、1901年から1904…

パブロ・ピカソ《初聖体拝領者たち》〜静けさの中で、呼吸だけが止まっている

原題:Les Premiers Communiants 作者:パブロ・ピカソ 制作:1919年 寸法:100 x 81 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) 1919年、ピカソの「新古典主義の時代」に描いた一枚。 初聖体拝領(はつせいたいはいりょう)は、カ…

パブロ・ピカソ《男の肖像》〜青に沈む男、感情が壊れる0.1秒前

原題:L’Homme en bleu 英題:PORTRAIT OF MAN [MAN IN BLUE] 別題:青い服を着た男 作者:パブロ・ピカソ 制作:1902-03年 寸法:93 x 78 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:パリ国立ピカソ美術館(フランス) ピカソが1901年から1904年までの時代に描いた「…

ジョアン・ミロ《オランダの室内Ⅰ》〜正しさをやめた部屋で、自由が動き出す

英題:Dutch Interior (I) 作者:ジョアン・ミロ 制作:1928年 寸法:91.8 x 73 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ニューヨーク近代美術館(MoMA) 《オランダの室内Ⅰ》は、スペインの画家ジョアン・ミロが1928年に描いた3点の連作絵画の最初の一枚。 左から…

ジョアン・ミロ《農場(農園)》〜故郷と異郷が同時に存在する小宇宙

英題:The farm 作者:ジョアン・ミロ 制作:1921年-1922年 寸法:123.8 cm × 141.3 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ワシントン・ナショナル・ギャラリー ピカソ、ダリと並ぶスペイン近代美術の三大巨匠ジョアン・ミロの初期代表作。故郷・カタルーニャ地…

ジョアン・ミロ《花と蝶》〜情熱が突き刺さった花瓶、静物という名のフラメンコ

作者:ジョアン・ミロ 制作:1922–23年 寸法:81.0 x 65.0 cm 技法:テンペラ、板 所蔵:横浜美術館(神奈川) 横浜美術館が所蔵する最高の一枚。作者はピカソ、ダリと並ぶスペイン近代美術の三大巨匠ジョアン・ミロ。30歳前後のパリ時代に描いた初期作のひ…

パブロ・ピカソ《花飾りの帽子の女》〜花と爆発、色の爆弾、未来の仮面

原題:Buste de femme au chapeau à fleurs 作者:パブロ・ピカソ 制作:1943年7月 寸法:81×60 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:個人蔵 《花飾りの帽子の女》はパブロ・ピカソが恋人だった写真家のドラ・マールを描いた油彩画。 ピカソとドラ・マール 1943…

パブロ・ピカソ《泣く女》〜魂のレントゲン、感情の肖像

原題:Femme en pleurs 英題:The Weeping Woman 作者:パブロ・ピカソ 制作:1937年 寸法:61 cm × 50 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵: テート・モダン(ロンドン) 《ゲルニカ》と同じ1937年、ピカソの愛人でありミューズでもあったドラ・マールを描いた…

ピカソ〈自画像〉という人生〜なぜ最後まで“自分”を描いたのか?

パブロ・ピカソ《自画像》1917年、紙、鉛筆 パブロ・ピカソは絵の道を歩み始めた10代から亡くなる90代まで自画像を残しており、ピカソほど「自画像」で人生を語れる画家はいない。15歳の少年期から、死の数か月前・91歳の最晩年まで。その筆跡には、青年の焦…

ピカソ《眠る女性の頭部》〜削られた静寂、漂う呼吸

【作品解説】ピカソ《眠る女の頭部》(1907/油彩・カンヴァス/MoMA)——“アフリカ彫刻の時代”に刻むような線で、顔を描くのではなく彫り起こす。黄色と茶の対比が太陽と土=生の循環を響かせ、冷たい造形に不思議な体温と安らぎが宿る。荒い筆触は破壊では…

ピカソ《アフリカ時代の自画像》〜形を溶かす火、世界を刻む原始の刃

【作品解説】ピカソ《自画像》(1907/油彩・カンヴァス/ナロドニー・ギャラリー)——“アフリカ彫刻の時代”に差し掛かった刃物のような線で、顔を描くのではなく彫り起こす。土と鉄の記憶を帯びた緑・黒・赤が体温の余熱を残し、背後の灼けるオレンジが内な…

ピカソ《ドライアド》〜森が歩き出す瞬間、文明の手で神話を彫る

原題:Dryad 別題:風景の中の裸婦 作者:パブロ・ピカソ 制作:1908年 寸法:185x108 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:エルミタージュ美術館(ロシア) 《ドライアド》は、ピカソが「アフリカ彫刻の時代」に描いた裸婦画であり、精霊を描いた絵画。 原題の…

ピカソ《二人の人物のある風景》〜大地の胎内で、アフリカとアダムのあいだ

原題:Paysage aux deux figures 英題:Landscape with Two Figures 作者:パブロ・ピカソ 制作:1908年 寸法:60 x 73 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ピカソ美術館(パリ) 《二人の人物のある風景》は、ピカソが「アフリカ彫刻の時代」に描いた風景画。…

パブロ・ピカソ《死に直面する自画像》〜異界で描いた最後の魂、最期のキャンバスは、あの世だった

英題:Self-portrait Facing Death 作者:パブロ・ピカソ 制作:1972年7月 寸法:65.7×50.5 cm 技法:紙、鉛筆 所蔵:不明 パブロ・ピカソが1972年7月、91歳で描いた最後の自画像。タイトルは《死に直面する自画像》。肉体の終わりを目前にしながら、なお“描…

パブロ・ピカソ《ヌード》〜青い女、原始が立つ地球の記憶

英題:Femme nue 作者:パブロ・ピカソ 制作:1907年 寸法:92 x 43 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:ミラノ博物館(イタリア) ピカソが「アフリカ彫刻の時代」に描いた裸婦画。絵画史を揺るがす《アヴィニョンの娘たち》への序章となる作品。現在はイタリ…

ピカソ《ピッチャーとボウル》〜赤と灰の呼吸、沈黙の設計図

原題:Bols et flacons 別題:Pitcher and Bowls 作者:パブロ・ピカソ 制作:1908年 寸法:66 x 50.5 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:エルミタージュ美術館(ロシア) ピカソが「アフリカ彫刻の時代」に描いた静物画。 この絵には、静物という名の「建築…

ピカソ《三人の女》〜石と肉のあいだに生まれた三美神

原題:Trois femmes 英題:Three Women 作者:パブロ・ピカソ 制作:1908年 寸法:200 x 185 cm 技法:油彩、カンヴァス 所蔵:エルミタージュ美術館(ロシア) 《三人の女》は、ピカソが「アフリカ彫刻の時代」に描いた裸婦画。世界の美術史を揺るがした《…

ピカソ《俺はピカソ》〜色彩に刻まれた19歳の鼓動

【作品解説】ピカソ《Yo, Picasso》(1901)。“青の時代”直前の19歳による自画像。カサジェマスの死の余韻を帯び、荒い筆致と強い対比色で自我の震えを刻む。1989年サザビーズで当時最高の4,785万ドル落札。