- 原題:Zelfportret als Zeuxis(オランダ語)
- 英題:Self-Portrait as Zeuxis
- 別題:ゼウクシスとしての自画像
- 作者:レンブラント・ファン・レイン
- 制作:1668年頃
- 寸法:82.5 cm × 65 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵:ヴァルラフ・リヒャルツ美術館(ドイツ)
薄気味悪さを感じさせる異色にして傑作。レンブラントが亡くなる前年に描かれた最晩年の自画像。ギリシアの画家ゼウクシス、哲学者デモクリトスに扮したなど様々な説がある。そもそも自画像かどうかもハッキリしない。人生の黄昏に差し掛かかってなお、これほど不気味な人物画を描ける技量に感服する。
顔が黄金に輝くのは、勝利の輝きではない。何かを失った者が発する重く鈍い光。人は歳を取ると多くのものを失っていく。若さ、名声、家族。それでも人生は続く。喪失を抱えて生きなければいけない。
老いとは削られ、軽くなり、透明になっていく過程ではない。失うことは身軽になるのではなく、背負うこと。レンブラントは、その重みを笑みに描く。
失墜を味わいながらも、なお笑みを浮かべる。愚かさも悲劇も慈しむように。
もう一つの絵画レビュー:闇の中でニヤリ、レンブラントのスニーク自画像
幕が下りた舞台袖から、ふっと顔だけ出して「見てた?」とウィンク。
レンブラントはキアロスクーロ(光と闇の一撃)で、自分をカメオ出演させる。照明は一本、演技は表情だけ。金色がかった厚塗りが、しわや頬を彫刻みたいに盛り上げ、笑みのニュアンスを数ミリ単位で増幅する。
人生の終盤、借金も名誉も揺れた男が、それでもニヤリと返す。
「まだ終わりじゃない、光はここに来る」
その確信が画面を明るくする。左端の薄い影は観客席への合図。私たちは舞台に呼び込まれ、闇と光の即興コントに参加させられる。
結局この絵は、“超至近距離セルフィー”の先祖。スマホいらずで光を呼び、闇にパンチラインを落とす。レンブラント、最後までサービス精神がすごい。ニヤリ一発で、場面が照る。
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