アートの聖書

美術館巡りの日々を告白。美術より美術館のファン。

ゴッホ《夜のカフェ》〜孤独の酒場、堕ちゆく夜、ゴッホが見た赤と緑の牢獄

ゴッホ《夜のカフェ》

  • 原題:Le Café de nuit
  • 英題:The Night Cafe
  • 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
  • 制作:1888年9月
  • 寸法:72.4 cm × 92.1 cm
  • 技法:油彩、カンヴァス
  • 所蔵:イェール大学美術館(アメリカ)

アルル時代にゴッホが描いた一枚。現在は、アメリカ・コネチカット州もイェール大学美術館に所蔵されている。

ゴッホ《黄色い家》1888年9月

ラマルティーヌ広場2丁目の右角にあっカフェ・ド・ラ・ガール(Café de la Gare)を描いたもの。《黄色い家》と同じ建物にあり、ゴッホは毎日のように食事をした。

《アルルの女(ジヌー夫人)》1890年2月、クレラー・ミュラー美術館

カフェのオーナーの夫人マリーは、《アルルの女(ジヌー夫人)》という作品のモデルとなっている。

ゴーギャン《アルルの夜のカフェ》1888年、プーシキン美術館

当然、ゴーギャンもゴッホと一緒に食事しており、同じカフェとジヌー夫人を描いている。

水彩画バージョンの《夜のカフェ》個人蔵

ゴッホは《夜のカフェ》の水彩画も描いている。ビリヤード台の右側からゴッホを見ているのが、オーナーのジヌー。ゴッホは店への借金(ツケ)を、この絵をプレゼントすることでチャラにしてもらったと言われている。

また、ゴッホは、カフェの様子を1888年8月のテオへの手紙に書いている。

ここは「カフェ・ド・ニュイ」(ここではよくある)と呼ばれ、夜通し営業しています。「夜這い屋」は、泊まるお金がないときや、酔っ払って泊まれないときに、ここに逃げ込むのです。

実際、このカフェは地元の落ちこぼれや売春婦が夜通し集まる場所だったようである。この絵はゴッホの中でもインパクトが強く、印象に残るが、タイトルが似ている《夜のカフェテラス》が、あまりに有名であるため、同じカフェだと混同されている。

ゴッホ《夜のカフェテラス》

こちらは、アルル中心部のフォーラム広場に面している「カフェ・ヴァン・ゴッホ」であり、別のお店である。

絵画レビュー:ゴッホ《夜のカフェ》

イェール大学美術館での展示

強烈な赤と緑の対比が画面全体を支配し、場末の夜のカフェに漂う不穏さを強調している。薔薇色やワインレッドの壁は、酔客たちの意識や酒に溺れた感覚を象徴する。

誇張された遠近法と厚塗りの筆致は、室内の安定を崩し、床やテーブルが傾き、椅子や人々が滑り落ちてしまいそうな不安定さを生み出している。そこには、セザンヌの静物画の影響を思わせる視覚的なゆがみ、重力がある。

周囲の人々はうつむき、眠り、あるいは無気力に時間を過ごし、天井に灯されたランプと床の黄色が、夜の倦怠と孤独を一層、際立たせている。

ゴッホは単なる室内風景を描いたのではない。空間全体に酔客の心情を投影し、疲労、人間の内なる不安を可視化した。この絵は、色彩と構図を通して「心の風景」を描いた、ゴッホならではの心理的室内画である。

 

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