- 原題:Le Cirque
- 作者:ジョルジュ・スーラ
- 制作:1890-1891年
- 寸法:185 cm × 152 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵: オルセー美術館(パリ)
31歳で亡くなったフランスの画家ジョルジュ・スーラの遺作。パリのモンマルトルに実在したサーカス団「フェルナンド・サーカス」を描いている。
《サーカス》は、スーラの死によって未完成の作品となり、死後、ポール・シニャックが購入。1927年にルーヴル美術館に寄贈され、1977年からオルセー美術館に所蔵されている。
友人の女性は大学の卒業旅行をヨーロッパの美術館巡りにし、イタリアでは《ヴィーナスの誕生》、スペインではピカソ《ゲルニカ》、ベラスケス《ラス・メニーナス》、ロンドンでは《戦艦テレメール号》、ヤン・ファン・エイク《アルノルフィーニ夫妻像》、フランスでは《モナ・リザ》《睡蓮》《ローヌ川の星月夜》などの名画も観たが、最も良かった絵がスーラの《サーカス》と教えてくれた。
絵画レビュー:スーラ《サーカス》
ジョルジュ・スーラの遺作となった《サーカス》は、画面のすべてが白馬に乗った女性曲芸師へと視線を導く、「女性讃歌」として輝きを放っている。
純白の馬の上に立ち、宙を舞うようなポーズを取る女性曲芸師。衣装は黄金色に輝き、観客席の赤や青の色面の中で際立っている。スーラは補色の対比を駆使し、女曲芸師の存在を光のように浮かび上がらせた。白馬の流麗な輪郭と女性のしなやかな肢体は、互いに響き合い、生命力と優雅さを表現している。
舞台下方の道化師、右端の指揮者、そして観客の視線が、すべて中央の女性へと集中する。構図そのものが「彼女こそこの場の中心」という物語を語っており、演目全体が女性の存在感を称えるために組まれている。観客席の層状の構成は女曲芸師を包み込む"額縁"のように機能し、その内側で女性の輝きがひときわ強調される。
サーカスという場は常に動きと喧騒に満ちているが、女曲芸師はその渦中で静謐な重心を保ち、優美な均衡を見せる。馬の疾走が描く円運動と、女曲芸師の跳躍が作る放物線は、祝祭のオーラとなって観る者を包み込む。
スーラの《サーカス》は、女性を舞台の支配者、視覚的焦点、そして祝祭の象徴として描き上げている。女曲芸師は見られる存在であると同時に、観衆を魅了し、舞台そのものを成立させる創造者である。
スーラの《サーカス》は、単なる娯楽の記録ではなく、舞台の中心で輝く女性を全方位から称え上げた「視覚の詩」なのだ。
![]() |
|
フェルナンド・サーカス団を描いた絵画作品
エドガー・ドガ《フェルナンド・サーカスのララ嬢》
- 英題:Miss La La at the Cirque Fernando
- 作者:エドガー・ドガ
- 制作:1879年
- 寸法:117.2 cm × 77.5 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵:ロンドン・ナショナル・ギャラリー
パリのサーカスで活躍した黒人女性曲芸師、ララ嬢の宙吊りの瞬間を捉えた作品。「観客が見上げる」と「ララ嬢が見上げる」という見上げる視点の二重奏により、舞台を超えて「天国へ昇る」象徴として立ち現れる。
ルノワール《シルク・フェルナンドの曲芸師》
- 英題:Miss La La at the Cirque Fernando
- 作者:ピエール=オーギュスト・ルノワール
- 制作:1879年
- 寸法:131.2×99.2cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵:シカゴ美術館
幼い少女が静止している絵なのに、官能性を感じる一枚。胸に抱えた果実、無造作に散らばった果実。脚の生々しさ、閉じた脚と開いた脚の緩急。見下ろす構図による「見せ物」としての存在。ルノワールの官能性が計算し尽くされた一枚。
ロートレック《フェルナンド・サーカスにて》
- 作者:アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
- 制作:1888年
- 所蔵:シカゴ美術館
あからさまに官能的に描いた一枚。騎馬する女性、見せつける生脚、鞭を持った男。ラフなタッチが欲望の荒々しさを浮かび上がらせている。
ジョルジュ・スーラの傑作絵画と画業
スーラの傑作絵画
日本のおすすめ美術館
東京のおすすめ美術館
神奈川のおすすめ美術館
関東おすすめ美術館
オランダおすすめ美術館
妄想ミュージアム『エヴェレスト美術館』