
- 原題:La Gioconda(イタリア語)
- 作者:レオナルド・ダ・ヴィンチ
- 制作:1503年 - 1509年頃
- 寸法:77 cm × 53 cm
- 技法:ポプラ板に油彩
- 所蔵: ルーヴル美術館(フランス)
世界一有名な絵画。女性の肖像画の最高傑作。たった一人の微笑みが、何世紀ものあいだ人類を惑わせ続けている。ヴィーナスでも、マドンナでもなく、モナ・リザという唯一無二のアイコン。
モナは「貴婦人」、リザは「リザ・デル・ジョコンド」、「モナ・リザ」で「リザ夫人」。正式には、「ラ・ジョコンダ (la Gioconda)」とされるが、この絵のまえで、タイトルに強い意味はない。なんでもいい。
髪は西洋の典型的なブロンドではなく、装飾品も一切身に着けていない。正面でもなく横顔でもない。素朴で、曖昧で、静か。なのに、存在感が世界一。神話の女神や絶世の美女をも圧倒する。
レオナルド・ダ・ヴィンチが用いたスフマート(透明な絵の具を薄く塗り重ねる技法)により、輪郭線はぼかされ、色の変化は柔らかく、曖昧な表情を生む。恋人であり、愛人であり、妻でもあり、母でもあり、マリア様でもある。観る者によって、怒っているようにも、睨んでいるようにも、微笑んでいるようにも見える。
《モナ・リザ》は、究極の曖昧美術であり、永遠のミステリー絵画。
素晴らしい絵画を観ることで開く扉がある。そして、最高の絵画に出逢うことで扉の向こうに広がる未知の光景が見えてくる。そんな未知の光景に恍惚としながら歩くと、そこにまた扉が立ち塞がっている。絵画の魅力は、どこまでも続く謎めいた迷宮のような深淵さにある。
それがまさに《モナ・リザ》である。
モナリザが「世界一有名な絵画」と呼ばれる理由
1911年の盗難事件と世界的報道
モナリザが世界的に知られる大きなきっかけとなったのは、1911年にルーブル美術館から盗まれた事件だ。この事件は新聞や雑誌で大々的に報じられ、世界中の人々がモナリザの行方に注目した。2年間の行方不明を経て、イタリアで発見されたこともさらに話題を呼び、結果として「モナリザ」という名前が世界的に浸透した。
ナポレオンによる収集と歴史的エピソード
モナリザはルーブル美術館に収蔵される以前、ナポレオンの宮殿を飾っていたことがある。ナポレオンは寝室に飾るほどこの絵を愛したと伝えられており、その逸話自体がモナリザの特別な地位を強調する。歴史の大人物との関わりは、名画としての物語性を強める要素となった。
メディアや大衆文化での拡散(映画、広告、パロディ)
20世紀以降、モナリザは映画や広告、さらにはパロディの題材として数え切れないほど登場してきた。アンディ・ウォーホルなど現代美術家による再解釈から、観光土産やネットミームに至るまで、そのイメージは常に再生産されている。芸術作品としてだけでなく大衆文化のシンボルとして広がったことで、モナリザは「世界一有名な絵画」と呼ばれるようになった。
損傷・襲撃事件(酸・石・ケーキ投げ)
モナリザはその名声ゆえに、しばしば襲撃の対象となってきた。1956年には観客が酸を投げつけ、下部に損傷を与えた。同じ年には石を投げられて表面に傷がつき、修復作業が行われた。近年でも2022年には環境問題を訴える活動家がケーキを投げつける騒動を起こしたが、防弾ガラスによって絵画そのものは守られた。これらの事件は、モナリザが単なる美術作品を超え、社会的メッセージの標的とされる存在であることを示している。
展示に関するセキュリティと話題
これらの事件を受けて、モナリザは現在、防弾ガラスと厳重なセキュリティによって保護されている。ルーブル美術館では特別な展示室に収められ、観覧者は一定の距離を保ちながら鑑賞するしかない。混雑や長蛇の列は観光の名物にもなっており、実際に「モナリザを見る」という体験そのものが話題性を帯びている。セキュリティと展示方法は常に注目を集め、モナリザの神秘性をさらに高める要素となっている。
モナリザの微笑みと視線

人物の視線は鑑賞者と真正面に向き合い、背景の風景は見下ろすように描かれている。これとは逆に、ゴッホは手前を俯瞰し、奥の風景を水平線と同じ高さで描いた。この対比により、現実と虚構を濾過し、ゴッホは親密さと無限性を同時に獲得した。
《モナ・リザ》にあるのは、眼ではなく、眼差し。そして、微笑み。ひとりの女性の「表情」「感情」ではなく、何かを語りかけてくる。
見れば見るほど不可解な気分に包まれる。絵画が神秘的なのではなく、それを見つめる自分の内面が、不思議な感覚に襲われる。そうやって、この絵画は500年以上も人々を魅了してきた。
眉毛がない隠された真実
顔料の劣化説
モナリザに眉毛が見えない大きな理由として、長い年月の中で顔料が劣化して消えてしまったという説がある。油絵具は環境の影響を受けやすく、光や湿度、修復の過程で徐々に薄れていく。高精細スキャンによって、かつて眉毛やまつげが描かれていた痕跡が発見されたことから、この説には一定の信憑性がある。
未完成説
一方で、ダ・ヴィンチが作品を完成させなかったのではないかという説もある。生涯にわたって作品を加筆し続ける傾向があり、モナリザも「永遠の未完成作」と呼ばれることがある。眉毛やまつげを描き込む前に制作を止めたため、現在の姿になったとする見解だ。
修復や塗り直しの可能性
さらに、修復や塗り直しの過程で眉毛が失われた可能性もある。過去の修復では薬品を使った洗浄や塗料の上塗りが行われることが多く、その際に繊細な部分が消えてしまった可能性は否定できない。特に眉やまつげのような細い線は、修復作業で最も失われやすい部分だと考えられている。
《モナ・リザ》のモデル論争
《モナ・リザ》のモデル論争は絶えない。
現在の《モナ・リザ》は制作当時とは大きく異なる。レオナルド・ダ・ヴィンチの死後、フランソワ一世の浴室に何十年も飾られ傷み、オランダの修復家が保護のために厚いニスを塗ったので、くすんでいる。例えば喪服に見える服は、制作当時は華やかな彩色だった。その後も、赤いペンキをかけられ、盗難事件に遭い、原型からは変わっている。その上で《モナ・リザ》の主要なモデル説としては6つがある。
- リザ・デル・ジョコンド(リザ夫人)
- イザベラ・デステ(亡命時の恩人)
- 母親カテリーナ
- ジャン・ジャコモ・カプロッティ(弟子)
- 自画像
- マグダラのマリア
- 聖母マリア
詳しくは、山田五郎さんのYouTubeや、ウィキペディア参照。ワイン漫画の聖書『神の雫』では、妊娠中の母親説を推し、「子を宿す慈しみに満ちた微笑み」としている。
面白いのはレオナルド・ダ・ヴィンチの自画像説。女装した自画像の発想や、性の境界を曖昧にする発想は、《モナ・リザ》の持つ神秘性、曖昧性に当てはまる。

ただし、自画像にしては、手の組み方が女性的すぎて男性の性を感じない。人差し指と中指の間隔が空いているので、余計に女性っぽく見える。
その点、『神の雫』の母親説が最も納得感があり、命を宿す「生」と、背後の「死」を連想させる川の対比がしっくりくる。
ただ、最終的に《モナ・リザ》は「聖母マリア」を描いたものだと思っている。
背景の干上がった河は、三途の川。この世で旅を続けるマリア様と、あの世へ旅立つ息子。女性は男性より長く生きる。男性よりも、多くの哀しみを背負う。
この絵は、キリストの葬儀が終わったあと。仄かなスマイルは、涙を流したあとの微笑み。ひと段落してホッとしている。死と向き合い、深い喪失を超えた者にだけ宿る静けさと安堵。「赦し」「自立」「自由」、そして「再生」
《モナ・リザ》の微笑みが放つのは、言葉でも感情でもなく、あたたかな光。
最も胸を撫で下ろしているのは、《モナ・リザ》ではない。絵を見つめ、静かな微笑みに赦される、我々自身。絵画とは、「赦し」と「再生」を与えてくれる、額縁のなかの教会なのである。
もう一つのレビュー
それは“微笑み”という名のスイッチ。押した覚えがないのに、こちらの胸のどこかがパッと灯る。煙のように境目をとかすスフマート。線がないから、想像が入り込む余地ができる。だからモナ・リザの口角は上がったり、止まったり、こちらの気分で形を変える。両手は静かな休符。三角形の構図にそっと重心を置き、絵全体を落ち着かせる。構造計算まで美しい。
背景は夢の地図。左と右で地平の高さが違い、曲がる道と川が、遠くへ遠くへと視線を連れていく。モナ・リザは自然と文明、現実と記憶の境い目に座っている。
《モナ・リザ》は、事件でも謎解きでもなく、静かな発電機。500年、絶えず人の心に電気を送ってきた。謎は、答えがないから長生きする。今日も彼女は、あなたの感想より一歩早く、ほほえみを更新している。
空前絶後のアート本、登場!

《モナ・リザ》や、史上最の絵画を決める企画も登場!『アートは燃えているか、』は、図版なしで名画をめぐる“言葉の美術館”です。かつては《モナ・リザ》=女装した自画像と考えていたターザン山本が、まったく別の切り口で《モナ・リザ》の真実を暴いています。《モナ・リザ》を超える史上最高の絵画は存在するのか?ぜひ、ご覧ください。
→ 書籍の詳細を見る [アートは燃えているか、]
女性の肖像画の傑作
日本の美術館ランキング
東京のおすすめ美術館