
笠間日動美術館は、銀座にある日動画廊の創業者・長谷川仁が1972(昭和47)年に、郷里の茨城県笠間市に設立した美術館。
私設美術館ながら収蔵品は3,000点を超え、ゴッホ、モネ、ピカソ、カンディンスキー、佐伯祐三、高橋由一 、藤島武二 など、西洋・日本画のオールスターが揃う。しかも、作品のクオリティも高い。
企画展示室、屋外庭園、フランス館など、建物が分別され、その間の移動も楽しめる。遠方からも足を運ぶ価値のある北関東で屈指の美術館である。
笠間日動美術館へのアクセス

最寄り駅は茨城県の笠間駅。新宿からは片道3時間。湘南新宿ラインで栃木県の小山駅まで行き、JR水戸線に乗り換え、笠間駅へ。交通費は1980円。水戸線の車窓からは長閑な田園風景が広がり、茨城の名峰・筑波山など、美しい山々も遠望できる。

駅からは徒歩20分またはタクシーで約5分。100円の周遊バスも出ているが、本数が極めて少ないので事前に調べておく必要がある。道中の笠間稲荷神社の門前通りは、様々なオシャレな店も並ぶので、行き帰りの散策も楽しみの一つ。

美術館の隣には、かつて笠間藩主だった浅野家に敬意を表し、忠臣蔵の大石内蔵助の像が立っている。

美術館に来るまでが一苦労だが、ここから日本屈指の美の殿堂が待っている。
企画展示館

笠間日動美術館の設計は、オーストラリア大使館などを手がけた芦原太郎建築事務所。入館すると、コインロッカーや受付があり、至る所で彫刻が迎えてくれる。
企画展示室は広々とし、快適な鑑賞。第1展示室は、ガラスケースがない。
訪れた2025年7月19日の企画展は「日本の洋画130年 珠玉の名品たち」。笠間日動美術館の日本画のコレクションの凄さが堪能できる。
高橋由一《本牧海岸》1877年

高橋由一《品川海晏寺紅葉》1880年

横浜美術館も所蔵する高橋由一の風景画。
高橋由一《鮭図》1879年-80年

高橋由一といえば、鮭。これに関しては山形美術館が所蔵する絵のほうが迫力がある。何度も描いて、ややマンネリか。
明治の洋画家・五姓田義松(ごせだ よしまつ)。横浜美術館も所蔵するが、画力がすごい。ニコラス・マースを思わせる。
青木繁《二人の少女》1909年

企画展のメインビジュアルであり、笠間日動美術館の代表作。少女の顔の向き、広げた傘のスケール感。構図が見事すぎる。
藤島武二《日の出》1931年頃

茨城県大洗海岸。モネの《印象、日の出》には及ばないが、好い絵。
アントワーヌ・ブールデル《ネクタイをしたベートーベン》1960-65年

最も好きな彫刻家ブールデルの作品が紛れ込んでいた。

2階はガラスケース展示で、撮影禁止の作品も多い。岡鹿之助《花》1939年、荻須高徳《アフィッシュ》1930年、森本草介《微睡の時》1984年、の3枚が凄かった。
岸田劉生《寒山風寒山風麗子像》1932-33年

好き嫌いを超越して、圧倒的な存在感を放つ岸田劉生。38歳で亡くならなければ、西洋をも驚かす傑作を生み出していたに違いない。
佐伯祐三《パリの街角》1927年

亡くなる前年、29歳前後の作品。佐伯祐三の中では、少しパワーダウン。
野外彫刻庭園

企画展示室からフランス館へは緑の回廊を通る。

その先に待っているのは、1981年5月に開設された野外彫刻庭園。視線の先には、常陸国の山々が望める。

日本人アーティストによる彫刻19体が、竹林や四季折々の花樹を背景に美の競演を繰り広げる。この庭園を通って、フランス館や日本館に行く移動もアートの時間。
フランス館

笠間日動美術館の最大の目玉がフランス館。印象派からエコール・ド・パリ、ピカソやミロ、アンディ・ウォーホルのポップアートまで、近代の傑作が常設展示されている。

入り口ではルノワールの《大きな勝利のヴィーナス》1915-16年が迎える。
展示室が2つあり、エコール・ド・パリなどの作品は撮影OK。第2展示室のアンディ・ウォーホルなど現代アートは撮影が不可。

すべてガラスケース展示はあるが、これほどのコレクションを一堂に会する美術館は、全国でも多くない。落ち着いた照明で、作品鑑賞に集中できる環境が整っている。
モーリス・ユトリロ

タイトルが不明。母乳の道を歩くような懐かしさと優しさ。
モーリス・ユトリロ《パレット》1933年
ゴッホ

ゴッホの絵、ピカソの絵(撮影禁止)だけ背後にカーテンが設けられている。
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ《サン=レミの道》

笠間日動美術館を代表する作品。1889年、ゴッホがサン=レミの精神病院に入院したときに描かれた一枚。
南仏のような明るさ。描き殴っているのに、デリケート。明るい色彩が泳いでいる。視界はボヤけ、希望も見えない。それでも目の前の道を歩く。ゴッホの意志が伝わってくる傑作。
ゴッホのサン=レミ時代
カンディンスキー
ワシリー・カンディンスキー《活気ある休息》1923年

原題は《Animated Repose》
カンディンスキーの中で童心の詰まった作品。三角形、円、楕円、市松模様など、様々な色彩と形を組み合わせ、日曜日の休息のようなポップさがある。
フェルナン・レジェ《時計のある構図》1938年
レジェもまた、キュビズムを音楽、音符にした画家。オランダのクレラー・ミュラー美術館に傑作が多い。
その他の画家の作品
アルベール・マルケ《ボートのある風景》1938年

エドガー・ドガ《舞台の袖の踊り子》1900-05年頃

ポール・セザンヌ《聖アントニウスの誘惑》1874年

オーギュスト・ルノワール《泉のそばの少女》1887年

タイトル不明

パウル・クレー

アンリ・マティス

クロード・モネ


日本館

フランス館の向かいにある「日本館」。常設展示室ながら、様々な企画の工夫を凝らしている。
パレットコレクション

1階は「パレットコレクション」。笠間日動美術館の創設者・長谷川仁と付き合いのあった画家から贈られたパレットが飾られている。


金山平三・佐竹 徳 記念室

2階が、日本画家の金山平三、佐竹 徳の絵画を展示した部屋。


奥谷博記念室

日本の洋画家・奥谷博の絵画を展示した部屋。21世紀を代表する日本画家だけあり、素晴らしい作品が多い。現代的なポップさと、アンリ・ルソーのような素朴派のタッチが心地よい。



美術館メシ
カフェ・ド・ローブ

企画展示室と野外彫刻庭園の間の回廊にあるのが、「カフェ・ド・ローブ」

平日だからか、女性スタッフ一人でワンオペしており、オーブントースターも大忙し。

コーヒーカップは、フランスの画家アンドレ・ブラジリエがデザインしたもの。2022年12月6日にジャン・レノが来日したときも珈琲を飲んでいた。

ピザフリッタ+ドリンクセット880円。そこに夏期限定のカキ氷400円。いちご、ブルーハワイもあったが、笠間日動美術館の緑にふさわしいメロン味にした。
美しみどりを眺めがらの格別なランチ。笠間日動美術館は、場所、空間、展示作品、美術館飯が一体となって調和している。遠くまで足を運ぶ価値のある美術館である。
笠間日動美術館の概要

- 開館:1972(昭和47)年
- 住所:茨城県笠間市笠間978−4
- 設計:芦原太郎建築事務所
- 所蔵:3000点以上
- 目玉:ゴッホ《サン=レミの道》
- 撮影:OK(一部不可)
- メシ:カフェ・ド・ローブ
- アクセス:JR水戸線「笠間駅」より徒歩20分
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