アートの聖書

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パウルス・ポッテル《水に映る牛》〜牛オールスターズ、夏の叙事詩

パウルス・ポッテル《水に映る牛》

輝かしい夏の日を描いています。人々は水遊びを楽しんでおり、牛たちはそれを見守りながら、日陰や池で涼を求めている。

パウルス・ポッテルは、28歳で亡くなったオランダ黄金時代の画家。牛をはじめとする動物画で知られる。画家であった父に学び、早熟の才能を示し、結核で夭折するまでに百点近い作品を残した。

パウルス・ポッテル《牡牛》1647年

パウルス・ポッテル《牡牛》1647年

代表作《若い牡牛》(マウリッツハイス美術館蔵)は、輝く夏の情景の中に牛を克明に描いた大作で、19世紀まではフェルメール以上に名声を得ていた。ポッテルは写実的な細部描写で知られ、日頃のスケッチをもとに動物たちを画面上で構成していた。

絵画レビュー:牛が世界を支配する午後

この絵を初めて見たとき、誰もが思う。
「牛、デカくない?」

画面の中央で水を飲んでいる牛。堂々とした体躯。しかも水面に完璧なリフレクション付き。もはや主役。いや、主演。人間は端っこでひっそりと家畜の世話をしているのに、牛はど真ん中で光を浴びている。

この絵は、「映え」を知っている17世紀である。見てほしいのは、水面。牛の足が入り、揺れ、空の青が溶け、反射がゆらりと歪む。これがとんでもなく上手い。

17世紀にして、すでにインスタ映えを完成させている。

しかもこの反射、単なる技術披露ではない。静けさを倍増させる装置なのだ。動いていないのに、時間が流れている。風も音もないのに、夏の午後の匂いがする。

この絵のすごいところは、牛が「家畜」ではなく「存在」として描かれていることだ。

毛並み、筋肉、湿った鼻先。一頭一頭がちゃんと重い。この絵は、寄せ集めではなく、
「牛オールスターズ」なのだ。

右側には農家の家。人間はいる。ちゃんと働いている。でも、この絵の空気を支配しているのは牛たちだ。人間は風景の一部。自然のリズムの中に溶け込んでいる。

これがオランダ的リアリズムの底力。ドラマを誇張しない。ただ、そこにある。

爆発もない。恋もない。陰謀もない。あるのは、牛と水と木陰だけ。なのに、しばらく見ていると離れられなくなる。視線が、ゆっくりと巡回を始める。

中央の牛。奥の白牛。寝転ぶ羊。水辺の反射。遠景の水平線。この絵は静かなのに、退屈しない。結論、これは“牛の叙事詩”である

この絵は派手ではない。だが、力がある。牛が水を飲む。ただそれだけで、世界は完結している。それを本気で描いた画家がいたという事実が、なんだか少し嬉しくなる。

静かな絵なのに、妙に満足感がある。まるで、よくできたスープのような一枚だ。

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