アートの聖書

美術館巡りの日々を告白。美術より美術館のファン。

横浜美術館という風景画〜浜風にひらく美の港

横浜美術館

横浜市みなとみらい地区にある横浜美術館は1989年11月3日に開館。横浜市が運営する公立美術館で、所蔵品のジャンルは幅広い。「横浜市美術館」ではなく、「横浜美術館」であるところにハマっ子魂を感じる。この場所には元々、三菱重工横浜造船所があった。アートを通じて横浜の過去と未来をつなぐ、美の港である。

横浜美術館の魅力

パブロ・ピカソ《女の肖像(マリ=テレーズ・ワルテル)》1937年

パブロ・ピカソ《女の肖像(マリ=テレーズ・ワルテル)》1937年

横浜美術館は、横浜にゆかりのある日本画家から、セザンヌやピカソなどの西洋画、写真などの現代アートまで収蔵している。その数は約14,000点。作品のクオリティも高く、他県や外国で「横浜美術館展」を開けるほど。

横浜美術館のアクセス

2021年から休館し、2025年2月8日に全館リニューアルオープンを迎えた。

横浜美術館

2025年2月8日(土)から6月2日(月)まで「おかえり、ヨコハマ」展が開かれ、所有する名作アートが一堂に会した。

横浜美術館へのアクセス

横浜美術館のアクセス

横浜美術館は「みなとみらい」駅〈3番出口〉から徒歩3分。新宿三丁目から東横線で40分、片道680円。

横浜美術館の外観・内観

美術館でアートを愉しんだあと、ハマスタでの野球観戦、中華街での食いだおれもセットで行ける。

横浜美術館の外観・内観

横浜美術館

横浜美術館は、新宿の都庁も手掛けた丹下健三の設計。地上3階建て、石造りのシンメトリーな外観は、モダンで重厚な佇まい。

グランドギャラリー

横浜美術館の外観・内観

エントランスに入ると、吹き抜けの開放的な「グランドギャラリー」が迎える。いくつもの柱廊が広がり、中世の神殿に入ったような雰囲気が包んでくれる。

横浜美術館の外観・内観

巨大な屋根は自然光を柔らかく取り込み、白く光を反射する。清潔感と開放感が心地いい。

横浜美術館

床と壁には淡いグレーの大理石や石材タイル。重厚感と安定感を与え、城壁の威厳を醸し出しながらも静けさを保っている。

ルネ・マグリット《レカミエ夫人》1967年

ルネ・マグリット《レカミエ夫人》1967年

スロープや階段の途中にはアーティストの彫刻作品が並び、歩く移動を愉しませてくれる。

ジョアン・ミロ《女の頭部》1975年

ジョアン・ミロ《女の頭部》1975年

この上がコレクション展(常設展示室)になっている。

車椅子を使ったデジタル看板、横浜美術館

車椅子を使ったデジタル看板

視覚的な高低差が空間に奥行きを与え、展示作品が舞台装置のように印象づけられる。

横浜美術館

来館者に視点の多様性と移動の自由を与える設計であり、美術館内の移動自体がアート体験として成立する。

横浜美術館

子どもたちが遊べるキッズスペースもあり、親子で美術館めぐりもしやすい。

横浜美術館の外観・内観

この空間は無料なので、喫茶スペースとも使える。

空間展示

横浜美術館

横浜美術館は企画展示が中心で8部屋。それぞれの部屋は広くゆったりし、ベビーカーを連れても鑑賞しやすい。赤ちゃんの頃からアートに触れるのはいいことである。親子いっしょに愉しんでほしい。

横浜美術館

重要なコレクションルーム。美術館の心臓は常設展示室。「おかえり、ヨコハマ」展が終わったあとも、赤レンガ倉庫に名画を眠らせず、出来るだけ永く常設展示してほしい。

イサム・ノグチ《真夜中の太陽》1989年

イサム・ノグチ《真夜中の太陽》1989年

美術館メシ

横浜美術館

ミュージアムショップ「MYNATE」の横にあるカフェ「馬車道十番館 横浜美術館 喫茶室」。

横浜美術館

「開港カレー」が目当てだったのだが、残念ながら13時過ぎには品切れ。代わりに頼んだのは、「BLTサンド」(880円)と「十番館プディングロワイヤル」(880円)。これが横浜スタジアムの場外ホームラン。

サクサクに焼いたサンドイッチは、食べ応えがありながら、重たくない。プリンは、見た目はクラシカル、でも一口食べると驚くほどの弾力。「エアーズロックのような存在感」と言いたくなるほどの濃密さ。

そこにふんわりソフトクリームが絡み合い、舌の上で溶けていく。全体に漂うのは、どこか懐かしく、でも上質な“横浜らしさ”。味の芸術ここにあり。

横浜美術館という風景画〜浜風にひらく美の港

7月8日にリベンジ。「開港カレー」と「ソフトクリーム」

カレーは辛さがなく、スパイスの旨みがじわじわと時間差で込み上げてくる。スターマンのようにラブリーなソフトクリームは、大人すぎず、甘すぎずのジャストミートな聖域。美術館メシも全国屈指である。

横浜美術館の珠玉の絵画・写真

横浜美術館という風景画〜浜風にひらく美の港

横浜美術館は、企画展と常設展(コレクション展)を分け合う。

横浜美術館という風景画〜浜風にひらく美の港

写真も展示すると絵画の展示数は少なくなるが、それでも有名画家の傑作絵画が観られる。

紀元前、縄文・弥生時代

横浜美術館の珠玉の絵画 紀元前、縄文・弥生時代

横浜といえば明治以降のイメージが強いが、紀元前から人類が住んで、縄文時代にはアート作品を生み出している。横浜美術館の所蔵ではないが、横浜の歴史を知る良い企画展示。

土器と埴輪

※神奈川県立歴史博物館の縄文土器

※神縄文土器(奈川県立歴史博物館)

※横浜市歴史博物館の弥生土器

※弥生土器(横浜市歴史博物館)

※横浜市歴史博物館の古墳時代の埴輪

※古墳時代の埴輪(横浜市歴史博物館)

横浜開港

ハイネ、ペーター・ベルンハルト・ヴィルヘルム《ペルリ提督横浜上陸の図》1854年以降

ペーター・ベルンハルト・ヴィルヘルム・ハイネ《ペルリ提督横浜上陸の図》1854年以降

マシュー・ペリーが交渉の場として選んだのが横浜村。まだ写真が発達していない時代、ドイツ系アメリカ人の画家を随行させた。日本の教科書に載っている絵。ヴィルヘルム・ハイネは都市景観図が得意だったらしい。山田五郎さんのYouTubeでも取り上げられた。

歌川広重

歌川広重《横浜海岸鉄道蒸気車図》1872年

歌川広重《横浜海岸鉄道蒸気車図》1872年

日本人の画家も黙っちゃいない。我らが歌川広重。ただし、ルパンと同じく三世。大真面目に写実するアメリカ人と違い、ド派手な色彩と白煙の過剰演出。これぞ浮世絵師。ゴッホも魅了された。この一枚をパッと見ただけで「文明開化」、いや「文明開花」の四字熟語が頭に浮かぶ。

明治・大正の日本画家

明治・大正の日本画家

ペリーの開港、文明開化の以降、日本の洋画も、どんどん発展していく。外国人の多い横浜はアートの最先端だったのだろう。

五姓田義松

五姓田義松《老母図》1875年、神奈川県立歴史博物館

五姓田義松《老母図》1875年、神奈川県立歴史博物館

明治の洋画家・五姓田義松(ごせだ よしまつ)。渡仏し、日本人初のサロン・ド・パリ入選作家となる。

これは母が亡くなる前日に描いた20歳の作品。日本人とは思えない画力、重力。獣のような眼で捉え、愛情で筆をとる。画家の鑑。

渡辺幽香

渡辺幽香《幼児図》1893年

渡辺幽香《幼児図》1893年

五姓田義松の妹で、日本の女流画家の草分けとなった渡辺幽香(ゆうこう)。兄妹で見事な写実力。日本の洋画家のお手本。

高橋由一

高橋由一《愛宕山より品川沖を望む》1877年

高橋由一《愛宕山より品川沖を望む》1877年

日本絵画史に残る傑作《》を描いていた頃の高橋由一の作品。愛宕山は港区の東京タワーの横にある山。東京23区に存在する唯一の自然の山で、クライマーが階段登りのトレーニングで使う。高橋由一が描くと、単なる風景ではなく、空気や匂いまでも伝わってくる。日本の近代画家の中でも傑出している。

昭和の日本画家・写真家

松本竣介

松本竣介《Y市の橋》1943年、東京国立近代美術館

松本竣介《Y市の橋》1943年、東京国立近代美術館

大好きな松本竣介の登場。京都の大山崎山荘美術館で個展があったときも行った。代表作《Y市の橋》は、横浜駅の近くの月見橋を描いた連作だが、横浜美術館は所蔵しておらず、他の美術館から借りている。レンブラントの自画像をオランダ政府が250億円でフランスから買い戻したように、せめて一枚だけでも所蔵して欲しいところ。

松本竣介《Y市の橋》1944年、個人蔵

松本竣介《Y市の橋》1944年、個人蔵

《Y市の橋》は青色よりも、土色が似合う。《Y市の橋》はアンリ・ルソーが描いたパントル・ナイーフ(素朴派)の絵そのもの。都会の中に黒のシルエット人を描く。孤独を描いているのに温かい。これは絵にしかできない魔法。

石渡江逸

石渡江逸《横浜長嶋橋所見(落陽)》1931年

石渡江逸《横浜長嶋橋所見(落陽)》1931年

こんなところに川瀬巴水?と思ったら、弟子の石渡江逸(いしわた こういつ)。師匠そっくり。やはり風景に愛着があると、ここまで師に迫るのか。風景のなかに人々の暮らしがあると、それが昔であっても、今の心にタイムリープしてくれる。

渋谷龍吉

渋谷龍吉《原節子》1939年

渋谷龍吉《原節子》1939年

『東京物語』の14年前、原節子が19歳のときの写真。女優の写真は難しい。上っ面の綺麗さでは嘘っぽいし、素を捉えても幻滅する。この写真は、日本における女優の写真の最高傑作。女優・原節子でも、本名の會田 昌江でもなく、ミロのヴィーナス。神話の世界から飛び出してきたような輝きがある。

浜口タカシ

浜口タカシ《相模原米軍ハイツに墜落(「鉄条網の内と外」より)》1964年(昭和39年)

浜口タカシ《相模原米軍ハイツに墜落(「鉄条網の内と外」より)》1964年(昭和39年)

こんな凄い写真家がいたとは知らなかった。勝新のような被写体も良い。この写真のテーマは一見「怒り」に思えるが、捉えているのは眼光であり、未来。写真が絵画に勝つにはモノクロでなければいけない。カメラが捉えるべきは「色」ではなく「光」だからだ。

沢田 教一

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報道写真家の沢田 教一。誰も力強く、ジャーナリズムの枠を超え、哲学的、人間の生命力が躍動する写真を魅せてくれる。

現代の日本画家・写真家

横浜美術館、現代の日本画家・写真家

世界に名を轟かせる日本のアーティストたち。横浜美術館の素晴らしさは、縄文時代から令和までのアーティストを網羅していること。歴史と芸術を掛け算してくれる。

横尾忠則

横尾忠則《黒いY字路11》2011年

横尾忠則《黒いY字路11》2011年

松本竣介が「Y市の橋」なら、横尾忠則は「Y字路」のアーティスト。福岡市美術館にある《暗夜光路 旅の夜》のような圧倒するインパクトではなく、絵の中に吸い込まれていくような磁力がある。

奈良美智

奈良美智《春少女》2012年

奈良美智《春少女》2012年

潤んだ瞳や背景のピンクだけで魅了してしまう力。少女という魅惑、得体の知れなさを表現している。この作品に合わせ、リニューアルした横浜美術館もイメージカラーは桃色にしている。

石川竜一

石川竜一《portraits 2013–2016(あざみ野、神奈川)》2016年

石川竜一《portraits 2013–2016(あざみ野、神奈川)》2016年

21世紀以降の日本は、画家よりも写真家が進化しているように感じる。狙っても撮れない、狙わないと撮れない。二人の少女は顔を見せない、一人の少女はレンズを睨む。なんでもない日常の恒久を、非日常の一瞬で切り取る。これぞ、写真が捉えるべき一枚。

19世紀・20世紀の西洋画家・写真家

横浜美術館、19世紀・20世紀の西洋画家

いよいよメインイベント。メジャーリーガーの登場。日本の画家や写真家も凄いが、音楽と絵画はヨーロッパが抜けている。

ロバート・キャパ

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説明不要の世界一有名なカメラマン。

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全国の至るところでキャパ展が開かれるので、何度も目にする機会が多い。

ポール・セザンヌ

ポール・セザンヌ《縞模様の服を着たセザンヌ夫人》1883-1885年

ポール・セザンヌ《縞模様の服を着たセザンヌ夫人》1883-1885年

絵画でありながら、写真に似ている。夫が新しいカメラを買って、はしゃいでスナップ写真を撮りたがる。妻はちょっと嫌そうに応じる、アレ。

セザンヌは、モデルとなった妻を真正面からではなく、少し上から斜めの角度から、そっと覗き込むように描いている。この角度と距離に、セザンヌの愛情がある。

夫人の表情は、やる気がないようにも、無表情にも、あるいは泰然自若にも見える。「セザンヌのモデルになるのも家事のうち」と言わんばかり。

セザンヌも夫人も、アートは非日常を生み出すものではなく、日常の延長線上にあることを知っている。

夫人はセザンヌの芸術に、無言で寄り添っている。画家としての才能を信じていたのか、夢中で絵を描く姿が好きだったのか。おそらく、その両方だったのだろう。平凡な肖像画に見えるが、これほどまでに夫婦の信頼関係を静かに映し出している作品が他にあるだろうか。

《ガルダンヌから見たサント゠ ヴィクトワール山》1892–95年

《ガルダンヌから見たサント゠ ヴィクトワール山》1892–95年

原田マハの『Contact art : 原田マハの名画鑑賞術』に登場し、観たかった絵画。セザンヌは40代から20年以上、故郷の山を30点以上も描いた。亡くなる直前も、この山を描いていた。アーティゾン美術館にも「サント゠ ヴィクトワール山」の絵がある。

パブロ・ピカソ

パブロ・ピカソ《ひじかけ椅子で眠る女》1927年

パブロ・ピカソ《ひじかけ椅子で眠る女》1927年

娘なのか、妻なのか、それとも愛人なのか。女性は誇らしげに眠っている。

高く伸びた鼻、閉じたまぶた、ゆるやかに傾ぐ首。きっと、誰もが振り返るほどの美しさを持っていたのだろう。

だがピカソは、その美をそのまま描こうとはしない。形を崩し、歪め、解体することで、美を奥に封じ込める。壊れるからこそ美しい。その儚さに、ピカソは真実の美を見ていた。

わかりやすい答えではなく、人間も「謎」こそが宝石なのだ。

そういえば「肘かけ」が見当たらない。きっと、ピカソの腕が愛する女性を支えているのだろう。

サルヴァドール・ダリ

サルヴァドール・ダリ《ガラの測地学的肖像》1936年

サルヴァドール・ダリ《ガラの測地学的肖像》1936年

ピカソいるところにダリあり。ダリのそばにガラあり。後ろ姿なのに、いろんな表情がある。怒りも、慈しみも、孤独も、誇りも。

ガラが背中で語っているわけではない。ダリが語らせている。抱きしめるわけでも、背後から語りかけるわけでもなく。見守ることで、ガラの心の声に耳をすませている。

この絵で、ダリが最も力を注いだのは、ガラの耳。誰かの言葉を待つようでもあり、その耳に声を吹き込むのはダリなのだ。

《ヘレナ・ルビンシュタインのた めの装飾壁画 幻想的風景 ― 暁、英雄的正午、夕べ》1942年/43年

《ヘレナ・ルビンシュタインのた めの装飾壁画 幻想的風景 ― 暁、英雄的正午、夕べ》1942年/43年

ダリが依頼されて描いた巨大な絵画。

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中身はそれほどでもない。頑張ったで賞。

《ニュートンを讃えて》1969年

《ニュートンを讃えて》1969年

ダリが晩年によく製作していたブロンズ蔵。f:id:balladlee:20250708150010j:image

ジョアン・ミロ

ジョアン・ミロ《花と蝶》1922-1923年

ジョアン・ミロ《花と蝶》1922-1923年

スペイン三連発。3打席連続ホームラン。横浜美術館にある最高の絵画。

大地を蹴る蹄の音が聞こえる。闘牛士の息づかい、観客の歓声、フラメンコのリズムまでもが、この花瓶から立ち上る。

生けられたのは、花ではなく、角。鋭く突き出た闘牛の角がマントを貫く。

ひらひらと宙を舞う蝶は、小柄なマタドール、命がけのダンス。

瓶の胴には繊細な花模様。その奥には野性が眠っている。一歩踏み出せば、熱狂のアリーナが広がっている。ここから聞こえてくるのは、風の音ではなく、情熱のフラメンコ。

ヴァシリー・カンディンスキー

ヴァシリー・カンディンスキー 《 網の中の赤》1927年

ヴァシリー・カンディンスキー 《 網の中の赤》1927年

タイトルに騙されてはいけない。血痕のような赤は、視線を誘う罠。その下で、もっと深いものが脈打っている。

カンディンスキーの絵で最も大切なのは、線でも形でもない。それを包む「余白」、すべてを沈める「背景」。

茶褐色の地は、大地ではない。それは濁った川の流れ、時の底で渦巻く記憶の色。

そして絵の内側には、城があり、月があり、太陽がある。幾何学という名の仮面をかぶった、宇宙のかけらが、そこかしこに浮かんでいる。

直線と円、鋭角と波形、すべてが音を持ち、色を歌う。地球の喜び。

かすかな振動、この世界が、まだ祝福されていることを、カンディンスキーは伝えようとしている。

ルネ・マグリット

ルネ・マグリット《青春の泉》1957-1958年

ルネ・マグリット《青春の泉》1957-1958年

やってくれる。常識をひらりとかわして、マグリットは塗る。紅一点といえば、一輪の花か、赤い靴。ワンポイントであしらう。

だがマグリットは、絵の背景すべてを赤で満たす。空も、大地も、時さえも。それは「青春」の色。赤い青春、赤い風、赤い泉。

青春とは、魂が眠る墓碑。

墓の上には鳥がいる。羽ばたくこともせず、ただ佇むその姿は、死者の魂を呼び戻す神使。

青春は一度きりではない。人生の黄昏にも、静かに戻ってくる。

マグリットは、それを知っている。今もこれからも、マグリットは赤い青春を生きる。

ルネ・マグリット《王様の美術館》1966年

ルネ・マグリット《王様の美術館》1966年

横浜美術館の主人公《王様の美術館》。

マグリットは絵に「球体」を入れる。それは地球であり、月であり、太陽であり、宇宙のしずく。心が豊かになる。

「王様の美術館」は山奥にある。辺境にある。そう簡単には辿り着けない。難攻不落。他者の解説を読み、音声ガイドを聴くような浅いアート体験しかできない者は来なくていい。

そして、同時に美術館は心の中にある。問いかけるべきは、他者ではなく、自分の心。なぜ自分の心の声に耳を傾けない?

マグリットは語りかける。アートとは絵ではなく、それを観て感じる心。アートは心の中にしかない。知識や他人の意見に委ねるな。

「己のアートを簡単に明け渡してはいけない」
「誰のものでもない。自分だけの宇宙を生きろ」

この絵は、山高帽の王冠をかぶった、あなた自身の肖像画である。

横浜美術館の概要

  • 開館:1989年11月3日
  • 住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4−1
  • 設計:丹下健三
  • 所蔵:約14,000点
  • 目玉:マグリット《王様の美術館》
  • メシ:馬車道十番館
  • 撮影:OK

素晴らしき神奈川の美術館

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