アートの聖書

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ルノワール《ピアノを弾く少女たち》〜音符の降る部屋、鍵盤の向こうは、お菓子の森

ルノワール《ピアノを弾く少女たち》

  • 原題:Jeunes filles au piano
  • 英題:Two Young Girls at the Piano
  • 別題:ピアノに寄る少女たち
  • 作者:ピエール=オーギュスト・ルノワール
  • 制作:1892年
  • 寸法:116 cm × 90 cm
  • 技法:油彩、カンヴァス
  • 所蔵:オルセー美術館(パリ)

1892年にパリのリュクサンブール美術館の非公式の依頼で制作した一枚。2015年に新国立美術館のルノワール展で来日し、すべての絵画で最も良かった一枚。ルノワールは赤・オレンジ系の暖色を基調にしつつ、彩度を抑え、明度を高めることで光の柔らかさと空気感を生み出している

絵のモデルはわかっていおらず、知り合いのブルジョワ家庭と思われる。

オランジュリー美術館のバージョン

オランジュリー美術館のバージョン

オルセー美術館に所蔵されている最高傑作のほか、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、オランジュリー美術館のバージョンにく加え、ルノワールは、2つの素描(油彩とパステルで1つずつ)を描いている。

絵画レビュー:ルノワール《ピアノを弾く少女たち》

絵画レビュー:ルノワール《ピアノを弾く少女たち》

まだ鍵盤に指が触れていないのに、すでに世界はメロディに満ちている。宙には色とりどりの音符が漂い、色彩はそのまま音色へと変わる。光と影のグラデーションは、調べの波となって揺れ、目の奥で旋律を奏でる。

その曲は、森を抜けた子どもたちがお菓子の家を見つけた時の驚きのようだ。部屋全体が砂糖菓子でできているかのように、温かく、甘く、誘う。これから奏でる曲は、きっとヘンゼルとグレーテルに捧げるもの。

背後のカーテンは緑の川のように流れ、花瓶は時の静かな装飾品として呼吸している。
少女たちの肌は一色ではない。桃色の鼓動、黄色い陽だまり、薄緑の微光が重なり合い、その透明な生命力は、空気までも柔らかく染めてゆく。

ピアノに向かう少女は、暖色の光に抱かれ、白い服と肌と楽譜は、朝露のように輝く。それを囲む金色の装飾は、音楽が形を持った瞬間のきらめきである。

 

オランジュリー美術館《ピアノを弾く少女たち》

  • 寸法:116 cm × 81 cm
  • 所蔵:オランジュリー美術館(パリ)

背景の具体的モチーフがなく、色の揺らめきで人物を際立たせ、ラフなタッチ。最も印象派らしい一枚。

 

メトロポリタン美術館《ピアノを弾く少女たち》

  • 寸法:111.8 ×86.4 cm
  • 所蔵:メトロポリタン美術館(ニューヨーク)

背景の緑と人物の肌の対比がよりくっきりし、立体感と奥行きが強調されている。ルノワール特有の柔らかさより、力強さが際立った一枚。

 

三役揃いぶみ

左からオルセー、オランジュリー、メトロポリタン

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