アートの聖書

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ベラスケス《三人の音楽家》〜17世紀のロックフェス、パンとチーズとロックスター

ベラスケス《三人の画家》

  • 原題:Los Tres Músicos(スペイン語)
  • 英題:Three Musicians
  • 作者:ディエゴ・ベラスケス
  • 制作:1618年
  • 寸法:88 cm × 111 cm
  • 技法:油彩、カンヴァス
  • 所蔵:ベルリン絵画館(ドイツ)

スペインの巨匠ディエゴ・ベラスケスが10代の終わり、まだマドリードに出る前に、故郷セビリアで描いた初期の作品。1618年は、師である画家フランシスコ・パチェコの娘、フアナ・パチェコと結婚した年でもあった。

画面には、楽器を弾きながら歌う二人の男と、ワイングラスを片手に微笑む男が描かれている。背景には梨を持った猿の姿も見える。テーブルの上にはナプキンに置かれたパンやワインの入ったグラス、さらにナイフが突き立てられたチーズが並び、にぎやかな宴の情景を形づくっている。

手前の青年はギターを抱えて満面の笑みを向けている。「俺たち最高でしょ?」と言わんばかりの自信満々な笑顔。ワイングラスを片手にしていて、もはや打ち上げムード。中央の男は天を仰ぎながら歌声を響かせる。表情は完全にトランス状態で、舞台の上で魂を解放しているロックスターそのもの。

刻むのは、オアシスの「Don’t Look Back in Anger」。シンプルでストレートなコード進行。真ん中の男が歌い上げる声は、フラメンコの情熱とソウルフルなロックの中間にあるような、叫びにも近い熱量を帯びている。

背後で梨を持っている猿が楽器を持てたなら、パーカッションでリズムを刻んでいるだろう。この絵から聞こえてくるのは、完成された交響曲ではない。もっとラフで、もっと即興的で、もっと楽しい。音楽は観る人によってビートルズにも聴こえてしまう。

 

ピカソが描いた《三人の画家》

ニューヨーク近代美術館のピカソ《三人の音楽家》

ピカソは1921年に、キュビズムで2枚の《三人の音楽家》を描いている。この絵は、ベラスケスの絵を参考にしたと思われる。

ディエゴ・ベラスケスの傑作絵画