オディロン・ルドンの絵画を数多くコレクションする岐阜県美術館を中心に、オルセー美術館の自画像などルドンの最初期から最晩年までの画業を紹介する企画展。
2025年4月12日(土)から6月22日(日)まで、東京・新橋にあるパナソニック汐留美術館で開催。
パナソニック汐留美術館は水曜が定休日で、知らずに行ってしまった。オランダから帰国して4月28日の月曜日にリベンジ。ゴールデンウィークということで多くの人で賑わっていた。
オフィスビルの4階にあり、ビルの外観のほかは内観も作品もすべて撮影禁止の鎖国体制。お通夜のような雰囲気の中、絵を鑑賞する。
画集を買おうと思ったが、色合いが良くない。公式サイトにある画像も本物から程遠いので、写真撮影を許可してほしいと願うところである。
オディロン・ルドン
オディロン・ルドン(Odilon Redon)は、ワインの聖地・フランスのボルドーに1840年に生まれた。同い年に、モネやロダンがいる。
本名はベルトラン=ジャン・ルドンだが、母親の愛称から「オディロン」と名乗る。自然の風景を描く「印象派」とは対照的に、空想や夢の世界を描く画家。
第1章「画家の誕生と形成」
最初の展示がリトグラフ(版画)や木炭画など。ピカソに「青の時代」、ユトリロに「白の時代」があるように、ルドンには「黒の時代」がある。ルドンが凄いのは、50歳になる手前まで「ノワール(黒)」にこだわり続けたこと。
意外にも社交家であり、絵を見てわかるように、陰湿ではなく、キャラクターが可愛い。ちなみに、この絵は水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』の目玉親父のモデル。
オランダのクレラー=ミュラー美術館にある代表作《キュクロプス》も、恐怖の一つ目の巨人ではなく、キュートに描く。
第2章「忍び寄る世紀末:発表の場の広がり、別れと出会い」
第2章で見事なのが横浜美術館が所蔵する《二人の踊女》。画質が悪すぎる(だから撮影OKにしてほしい)が、背景の黄金がすごい。
黄昏でも夜明けでもなく、この世に存在しない空。世界の始まりも、世界の終りも、どちらも美しい。人生は呪いであり祝祭。ミロのヴィーナスはダンサーだったのかもしれない。
第3章「ルドン 新時代の幕開け」
展覧会のメインビジュアル。「黒の時代」を越えて、「色彩の時代」に入った作品。これも画質が悪すぎるが、背景のピンクと、手に持った枝のようなものの輝きがすごい。ルドンは生き物よりも、背景を描く力がすごい。中身よりも色彩の力。
最も観たかったのが、ポーラ美術館が所蔵する《日本風の花瓶》。ルドンは40歳のときに、12歳下のカミーユと結婚する。奥さんが花瓶が好きで、それを空想と合わせて描いた一枚。塗るというより、こすったようなタッチ。だが、花の美しさは、どの絵画にも負けない。実際に見ると色調が全然違うので、ぜひ美術館を訪れてほしい。