アートの聖書

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真珠の耳飾りの少女〜振り返ればフェルメールがいる

真珠の耳飾りの少女〜振り返ればフェルメールがいる

  • 原題:Het meisje met de parel(オランダ語)
  • 英題:Girl with a Pearl Earring
  • 邦題:青いターバンの少女
  • 作者:ヨハネス・フェルメール
  • 制作:1665年(推定)
  • 寸法: 44.5 cm × 39 cm
  • 所蔵:マウリッツハイス美術館(オランダ)

フェルメールの絵で数少ない背景が塗りつぶされた一枚。少女の顔は、闇の宇宙に浮かび上がる地球という球体のよう。

女の命である髪を隠す。髪を隠すことは、そこに神を隠すこと。女の神秘を閉じ込めることで観る者に神秘を開放する。年齢は不明。モデルも不明。幼さと艶麗を持つ不思議な少女。半開きの唇の赤にエロスと魔性が宿る。

この絵で最も重要なことは振り向いていること。なぜ女は振り向くのか?男が近づいているから、男が声をかけているから。フェルメールはこの少女を遠くから見守るのではなく吸い寄せられている。少女の宇宙に。

ターバンの青と瞳の黒。地球と宇宙の色。唇の赤が女の血。処女の色。発情の色。この絵は少女の処女を奪いたい。フェルメールの情念が宿っている。真珠の耳飾りは、これから処女を失う少女の美しき涙である。

フェルメールという画家

真珠の耳飾りの少女〜振り返ればフェルメールがいる

フェルメールのサイン

ヨハネス・フェルメールは1632年にオランダのデルフトに生まれた。本名は本名ヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト。パブと宿屋を営みながら画商もおこない、その間に画家として絵を描いたといわれる。43歳(42歳の説もある)で生涯を閉じるまでに残した作品は35点で制作年数や工程の記録も乏しい。漫画『ギャラリーフェイク』第12話「ターバンの女」によると、フェルメールのタッチは驚くほど平坦でなめらか。絵具は幅広く塗られ、タッチは奇跡的にまで少ない。贋作者が似ようとするほど筆致が多くなり細かいタッチになってしまう。フェルメールの鮮やかな青は「フェルメール・ブルー」と呼ばれる。

忘れられた画家

フェルメールは死後200年以上も忘れられた画家であった。現在ではルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》と並び、少女を描いた絵画の最高傑作であるが、1800年代のオークションで《真珠の耳飾りの少女》は2ギルダー30セント、今の4000円から1万円で落札された。その後、マウリッツハイス美術館に寄贈。美術館は今や大儲け。1984年に国立西洋美術館に初来日したときは《青いターバンの少女》というタイトルだった。2012年に東京都美術館に来たときの入場者数は75万8000人。

映画『真珠の耳飾りの少女』

映画『真珠の耳飾りの少女』

フェルメールが描いた《真珠の耳飾りの少女》はバストトップ。しかし、その下には豊満な胸が隠れていることをのぞかせる。映画で真珠の耳飾りの少女を演じたのは10代のスカーレット・ヨハンソン。豊麗さと処女性を備えているベストキャスティングと言える。若き日のアリシア・ヴィキャンデルで別の物語を作って欲しかった。ちなみにフェルメール役はコリン・ファース。モデルの少女は使用人のグリートで、11人の子供がいたといわれるフェルメールは使用人を孕ませまくる女ったらしとして描かれる。《真珠の耳飾りの少女》の妖艶さを見れば納得のキャラクターだが、映画としては駄作だった。

フェルメールの絵画が展示してある美術館

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