
- 英題:Kiss of Judas
- 作者:ジョット・ディ・ボンドーネ
- 制作:1305年
- 寸法:183×183 cm
- 技法:フレスコ画
- 所蔵:スクロヴェーニ礼拝堂(イタリア)
ルネサンス前夜、後期ゴシックの画家であり「西洋絵画の父」と称されるジョットが、キリスト伝承の一場面を描いた正方形の壁画。イタリア・パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂を飾る《ユダの接吻》である。
新約聖書によれば、ユダは銀30枚と引き換えにキリストを裏切り、兵士たちに「私が口づけする人がイエスだ」と告げた。この絵は、兵士や大祭司にキリストの身元を知らせるため、ユダがイエスに接吻する瞬間を描いている。左側ではキリストの弟子ペテロが大祭司マルコスの耳を、ナイフで切り落としている。暴力と権力の間にサンドイッチされたキリストとユダに焦点が集まる構図になっている。
ジョットは夜空を漆黒ではなく、深い蒼色で表現した。それはゴッホが《夜のカフェテラス》で青い夜空を描くより500年以上も前のこと。そして、フェルメールに先駆けて、高価な天然ウルトラマリン(ラピスラズリ由来の顔料)を用いている。
青い夜空は下界の暖色を引き立たせると同時に、神聖さと荘厳さを際立たせている。そして、この場面は裏切りでありながらも、背の低いユダがキリストに救いを求めているようにも見える。

タイトルは《キリスト》ではなく、《ユダの接吻》である。主役はあくまでユダ。最大の愛情表現である接吻を裏切りの合図とすることで、罪深さと、その奥にある後悔が浮かび上がる。裏切りながらも、心の底では救いを求める。ジョットは二重の感情を描き出している。
人間は単純に善人・悪人に分けられる存在ではない。もっと複雑なものを抱えて生きている。ユダの顔には悲しみが宿り、かつて師と仰いだキリストへの、さよならの口づけが刻まれている。引き返せないその瞬間に、後悔と愛情が同時に込められている。
ジョットの視覚的誘導

ジョットは《ユダの接吻》を三分割の構図にし、視線誘導の仕掛けを示している。
-
黄色の円:中央のキリストとユダ。構図の視線集中点。
-
水色の枠:背を向けた人物が、場面に引き込む導入役。矢印は左→中央への視線誘導
-
オレンジの枠:右側の武装兵士群。これから戦闘が始まりそうな圧迫感と緊張を生み、右→中央への視線を作る。
-
黄色の縦矢印:背景の槍と松明の方向が中央に収束し、視線を固定。
このようにジョットは、左右の群衆の動きと背景の直線要素を使って、必ず視線が中央のキリストとユダに集まる構図を作っている。
空前絶後のアート本、登場!

美術館に行く前に読むと、絵の見方が180度変わります。『アートは燃えているか、』は、図版なしで名画をめぐる“言葉の美術館”です。ゴッホの最高の自画像も、この本の中で決定します!絵を観る天才が何を語るのか、その眼で確かめてください。
→ 書籍の詳細を見る [アートは燃えているか、]
ジョットの傑作絵画
日本に来日したジョットの絵画
日本のおすすめ美術館
東京のおすすめ美術館
神奈川のおすすめ美術館
関東おすすめ美術館
オランダおすすめ美術館
妄想ミュージアム『エヴェレスト美術館』