アートの聖書

美術館巡りの日々を告白。美術より美術館のファン。

原田マハ『〈あの絵〉のまえで』美術館という日常の祈り、絵に寄り添い、絵に寄り添われる

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あらすじ

日本各地の美術館に収蔵された名画をモチーフにした6つの短編小説からなる作品集。登場するのは全国6ヶ所の美術館(広島、岡山、箱根、豊田、長野、香川・直島)と、各章ごとに異なる絵画と主人公。登場人物たちはそれぞれ人生の岐路や痛みを抱えており、絵との出会いをきっかけに心を動かされ、立ち上がる力を得ていく。実在の作品と美術館が舞台となっているため、物語を追ううちに自分も美術館を訪れているかのような臨場感に包まれる。

「ハッピー・バースデー」

→ひろしま美術館所蔵、ゴッホ《ドービニーの庭》

「窓辺の小鳥たち」

→大原美術館所蔵のピカソ《鳥籠》

「檸檬」 

→箱根・ポーラ美術館所蔵のセザンヌ《砂糖壺、梨とテーブルクロス》

「豊饒」 

→愛知・豊田市美術館のクリムト《オイゲニア・プリマフェージの肖像》

「聖夜」

→ 長野県立美術館の東山魁夷《白馬の森》

「さざなみ」 

→直島・地中美術館のモネ《睡蓮》

書評・レビュー

原田マハの『〈あの絵〉のまえで』は、アートを「モノ」ではなく「出来事」として描いている。絵はただ飾られているのではなく、人がその前に立ち、心を震わせた瞬間に初めて存在を完成させる。

この短編集に登場する人々は、喪失や孤独を抱え、人生の迷路に立ちすくんでいる。けれど、絵の前に立ったとき、言葉ではなく光や色に導かれる。絵は沈黙したまま、だが沈黙ゆえに雄弁であり、見る者の奥底から声を呼び覚ます。

その経験は、スポーツや音楽ライブのように大きな熱狂を巻き起こすものではない。むしろ線香花火のように、静かで小さく、心の奥に火を灯すもの。美術館の絵は、日常から遠く離れた高みではなく、半径数キロの暮らしのなかにあり、そっと寄り添ってくれる存在だと原田マハは教えてくれる。

この本で初めてゴッホの《ドービニーの庭》という作品の存在を知った。どうしてもその絵のまえに立ちたくなり、東京から新幹線に乗って広島まで向かった。

原田マハが物語という形で橋をかけ、その絵の前へと導いてくれる。原田マハは、アートと日常を繋ぐ接続詞である。物語を読むことで、絵は遠い存在から、生活に寄り添う「隣人」へと変わる。そして気づく。絵と向き合うとは、自分の魂と向き合うことに他ならない、と。

 

ゴッホ《ドービニーの庭》

クリムトの触れない不倫愛

『〈あの絵〉のまえで』に登場する美術館

ひろしま美術館

ポーラ美術館

大原美術館

豊田市美術館

原田マハの本

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