- 英題:Bal à Bougival
- 作者:ピエール=オーギュスト・ルノワール
- 制作:1883年
- 寸法:181.9 × 98.1 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵: ボストン美術館(アメリカ)
《田舎のダンス》や《都会のダンス》と同じく、1883年にルノワールが描いたダンス絵画の一枚。ルノワールが描いた踊りの最高傑作。ボストン美術館には、ゴーギャンの最高傑作《われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか》もあるが、「美術館で最も愛される作品」と言われる。
場所はパリ近郊のブージヴァル。男性はルノワールの友人の作家ポール・ロート、女性はモーリス・ユトリロの母シュザンヌ・ヴァラドン。
《都会のダンス》と同じ2人だが、圧倒的に《ブージヴァルのダンス》が傑作である。
絵画レビュー:ルノワール《ブージヴァルのダンス》
構図も色彩も、音楽の和音のように完璧に響き合っている。女性は左に立ち、白い首筋と柔らかな顔を見せ、男性は夏の陽を閉じ込めた麦わら帽子の影に顔を隠す。赤いハットは花咲く薔薇のように鮮やかで、ピンクのドレスは花びらのように揺れ、二人の動きに呼応して色も踊る。
見方によっては、男性がキスを迫り、女性が顔を背けているようにも見える。しかし、それは拒絶ではない。微妙な距離は、愛の呼吸を整える間合い。幸福感の香りが漂い、その空気は甘く、少しだけスリリングだ。完璧な構図とは、常に危うさを孕む。ルノワールはその危うさを、緊張と緩和の間に巧みに忍ばせる。
背後のベンチでは、別の男が無関心に座り、ジョッキを傾ける。その冷めた視線の欠如こそが、この二人を孤立させ、「ふたりだけの世界」を、「ふたりだけの宇宙」を作り出している。
社交ダンスとは、見知らぬ二人が互いの存在を受け入れ、同じ音楽に身を委ねる儀式。手と手が触れ、視線が交わり、呼吸が重なる瞬間、社会は消え、礼儀は溶け、ただ二人の物語が始まる。《ブージヴァルの舞踏》は、その瞬間を閉じ込めている。ルノワールは筆ではなく、二人の心の鼓動を、色彩で奏でた。
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