
- 原題:Garden of the Hospital in Arles
- 邦題:アルルの病院の中庭
- 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
- 制作:1889年4月
- 寸法:73.0 cm × 92.0 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵:オスカー・ラインハルト・コレクション(スイス)
1888年12月23日、ゴーギャンとのいざこざの末、「耳切り事件」を起こしたゴッホは、入院していたアルルの市立病院の絵を2枚描いている。最初に描いたのは病室から見た庭の風景。
アオイヒゲショウマ、ワスレナグサ、キョウチクトウ、パンジー、サクラソウ、ポピーといった花が咲いている。
鮮烈な黄色と緑の響き合いが目に飛び込んでくる。柱や回廊の黄色は、陽光をそのまま溶かし込んだように輝き、庭の木々や花壇の緑と呼応しながら、画面全体に生き生きとした呼吸を与えている。色は、感情の震えとして見る者に迫ってくる。
小さな円形の池は、静かに視線を引き寄せ、庭全体の秩序を司る中心のように佇む。そこから放射状に伸びる小道は画面を穏やかに支え、見る者の目を四方へと導いていく。その構図には、混乱や不安を抱えていたゴッホ自身が求めた安定の感覚が滲んでいる。
奥の回廊に小さく描かれた人々は、庭に静かな温もりを与えている。主役ではないが、存在することでこの空間がただの風景ではなく「癒しの場」としての意味を帯びる。
色彩の激しさと構図の穏やかさ。その相反する力が同じ画面に共存することで、この絵は深い余韻を残す。病と孤独のただ中にあったゴッホが、庭に秩序と安らぎを探し求めた切実な祈りが、この絵の美しさの根底に流れている。

テオは、この絵画の感想として「アルルの病院は素晴らしい。蝶とエグランティーヌの枝もとても美しい。色彩はシンプルで、とても美しく描かれている」と述べた。この中庭は現存し、「エスパス・ヴァン・ゴッホ」と名付けられている。
アルルの病院の病棟

- 原題:Ward in the Hospital in Arles
- 邦題:アルルの病院の病棟(病室)
- 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
- 制作:1889年10月
- 寸法:73.0 cm × 92.0 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵:オスカー・ラインハルト・コレクション(スイス)
サン=レミの精神病院に移ってから描いた絵画。ゴッホは、妹のウィルに絵について手紙を送っている。
前景には大きな黒いストーブがあり、その周りに灰色と黒の患者の姿があり、その後ろには赤い床板が敷かれた非常に長い病棟があり、2列の白いベッドがあり、仕切りは白だがライラック色か緑がかった白で、窓にはピンクと緑のカーテンがあり、背景には白と黒の修道女の姿が2人いる。天井は紫色で、大きな梁がある。
この絵を見つめると、最初に目を奪うのは冷たい青の広がり。壁や天井を覆う青は、静けさと孤独を帯びて空間を支配し、病院の冷ややかな空気を象徴している。しかし床に広がる赤褐色の木の色は、冷たさを和らげるように温もりを与え、そこに生きる人々の存在を支えている。青と赤の対照が、心の内に緊張と安堵の両方を呼び起こす。
構図は中央のストーブを軸に広がっている。火を囲む人々の姿は、寒さと孤独を共有しながら、わずかな温もりを求めて寄り添っているように見える。その姿は小さな共同体のようであり、長い廊下の奥へと続く空間の果てしなさと対照を成す。視線は自然と遠方へ引き込まれるが、同時に中央のストーブに戻され、反復するように画面を漂う。
病室の白いカーテンは、個々の苦しみを隠しながらも、同じ空間に並べられることで共通の運命を暗示する。光が差し込む窓は小さく、閉ざされた空間にほのかな希望をにじませている。
この絵の良さは、色彩の冷たさと温かさのせめぎ合い、そして構図がもたらす孤独と連帯の同居にある。ゴッホは病院という場所を写実的に描いたのではなく、そこに集う人間の心の温度を色と形で刻みつけた。

このアルルの病院でゴッホを治療したのが、若きフェリックス・レー医師。ゴッホは感謝を込めて、肖像画を描いている。
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