アートの聖書

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棟方志功《善知鳥板画巻「夜訪の柵」》〜闇が息をする、その刹那、黒の海に、ひらく一寸

棟方志功《善知鳥板画巻「夜訪の柵」》

  • 原題:うとうはんがかん・よどいのさく
  • 作者:棟方志功
  • 制作:1938年
  • 寸法:31.0 ×32.0 cm 
  • 技法:木版・紙
  • 所蔵:北海道立近代美術館など

日本の板画家(版画ではなく板画)・棟方志功(むなかた しこう)が、郷土・青森を舞台に描いた連作「善知鳥板画(うとうはんが)」の一枚。

この連作は能の演目「善知鳥(うとう)」に着想を得ており、「能の持つ幽玄さを白と黒の絶対性でつかみたい」という思いから、31点の絵巻として構成されている。

「善知鳥(うとう)」は棟方志功の故郷・青森市の古名で、作者にとって特別な縁を持つ題材だった。

物語は、富山の立山を訪れた修行僧の前に、猟師の亡霊が現れ、青森の外ヶ浜へ向かうなら、自分の妻子に会い、蓑と笠を菩提の供え物として渡してほしいと頼む。僧は外ヶ浜を訪ね、妻子に事情を語る。すると猟師の亡霊が現れ、生前、善知鳥を殺してきた罪により、地獄でその化鳥に責め苦を受けている姿を僧に見せる。そして、生きるためとはいえ殺生を重ねずにはいられなかった自分の悲しさを嘆く。

絵画レビュー:闇が開く、一本の“細い物語”

まず、この“細い裂け目”に目を奪われる。黒という闇が、画面のほぼすべてを支配しているのに、その真ん中にスパーンと一本だけ、光が切り込んでくる。その隙間に何者かが立っている。

忍び込むような気配。覗くような気配。着物の模様は、優雅な柄でもない。衣装というより、闇からちぎれた破片が貼りついているように見える。

この作品から、聴こえるのは、沈黙だ。それも、ただの静けさじゃない。物語が始まる直前の静けさ。見る者に「何かが起きるぞ」と背筋のどこかを軽く叩いてくる。

黒という闇を背景に、たった一本の白い道。その道に立つ、謎めいた人物。顔を半分だけ光にさらし、半分はまだ闇に預けている。

棟方志功は、扉を少しだけ開けて見せる。闇を背負いながら、光の側へ踏み出すひとりの女性。「知ってはいけないもの」を知ってしまった顔なのか?まだ少女のような“あどけなさ”もある。これは絵で完結するのではなく、絵を見て語り合うための絵である。

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