アートの聖書

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ゴッホ《麦わら帽子の自画像》〜太陽をかぶった孤独、麦わら帽子の下の青い沈黙

  • 英題:Self-Portrait with Straw Hat
  • 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
  • 制作:1​​887年7月~8月
  • 寸法:41.8 cm x 31.5 cm
  • 技法:油彩、カンヴァス
  • 所蔵:ゴッホ美術館(オランダ)

ゴッホがパリに移住して約1年後、1887年の7月か8月に描いた自画像。
ゴッホは麦わら帽子を好み、同じモチーフの自画像をいくつも残している。

この作品は、新しいカンヴァスを買う余裕がなかったため、以前描いた静物画の裏側に描かれた。

絵画レビュー:太陽の帽子と、救われないまなざし

ゴッホ《麦わら帽子の自画像》

この自画像、麦わら帽子が強すぎる。絵を見た瞬間、黄色が飛び込んでくる。顔より先に帽子を見る。とにかく大きい。つばが広く、光をたっぷり吸い込んで、ほとんど太陽を頭に乗せているみたいだ。

背景は深い青。そこに、黄色い麦わら帽子がどんと置かれる。青と黄色は補色に近い関係で、並ぶと互いを強く引き立て合う。だから帽子はさらに明るく見え、背景の青はさらに深く感じられる。

この色のぶつけ方が、かなり気持ちいい。

顔はその間にある。黄色の帽子と青い背景に挟まれた、少し疲れた顔。帽子だけ見ると、南仏の陽気な画家みたいだ。軽やかで、明るくて、外へ出ていく気配がある。だが顔を見ると、そんなに単純ではない。目は静かで、どこか遠い。口元も固い。明るい帽子をかぶっているのに、本人はあまり浮かれていない。

この絵には、外の明るさと内側の静けさが同居している。

構図はシンプル。背景に余計なものはない。だから視線は自然に、帽子、目、髭へと移っていく。

強く睨んでいるわけではない。大きな麦わら帽子の下で、目だけが妙に冷静だ。この冷静さが、画面の明るさにブレーキをかけている。

帽子は、横方向の細かい線で編み目や丸みを作っている。ただ黄色く塗っただけではない。短い筆跡が重なり、麦わらの繊維のざらつきと光の反射を同時に出している。つばのカーブも、筆の流れでちゃんと感じられる。

背景は逆に、青いタッチが斜めや横に走っている。空気が動いているように見える。服にも青や白の筆触がざくざく入り、人物全体が背景の青と響き合っている。

ここで帽子だけが、まるで別の温度を持っている。青の世界の中に、黄色い太陽が浮かんでいる構成だ。

赤みのある金色の髭が、帽子の黄色とつながっている。帽子、髪、髭がひとつの暖色の流れになり、その下に青い服と背景が広がる。暖色と寒色の対比で、顔がぐっと前に出てくる。

麦わら帽子は陽気、色も鮮やか。でも、顔は静かで、少し孤独。

だから、この自画像は「夏の画家」では終わらない。外の光を浴びながら、内側ではまだ何かを抱えている人間の顔。明るさに救われたいけれど、完全には救われていない顔。それが、この絵を忘れにくくしている。

ゴッホはここで、光の中にいても消えない孤独を描いている。明るい。でも、少し寂しい。その矛盾が、この自画像のいちばんいいところだ。

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