アートの聖書

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ゴッホ《ズアーブ兵》〜軍服の下のやさしさ、炎と緑の肖像

ゴッホ《ズアーブ兵》

  • 原題:Le Zouave (half-figure)
  • 作者:ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
  • 制作:1888年6月
  • 寸法:65.8 cm x 55.7 cm
  • 技法:油彩、カンヴァス
  • 所蔵:ゴッホ美術館(オランダ)

1888年にゴッホがアルルを訪れたときに知り合ったズアーブ兵を描いたもの。「ズアーブ」はアルジェリア人によって構成されたフランスの歩兵。エナメルの軍服、赤い帽子がトレードマーク。

この一枚は、赤と緑の補色の練習のために描いたもの。人物画を描くことを最大の喜びとしていたゴッホは、歩兵を描くについて手紙を残している。

ついにモデルが見つかった。ズアーブの少年だ。顔は小さく、首は雄牛のようで、目の形は虎のようだ。下品で、時にはけばけばしい肖像画を描きたい。それは私に教訓を与えてくれる。そして、それが私の作品に何よりも求めるものだ。

赤い煉瓦はアルルにはないものだが、色のコントラストを強調するために、ゴッホが描いた。

ゴッホ美術館の《ズアーブ兵》の展示

ゴッホ《ズアーヴ兵》1888年6月

この絵は2016年の『ゴッホとゴーギャン展』で来日し、2025年4月にゴッホ美術館を訪れた際にも展示されていた。

鮮烈な赤い帽子と濃紺の制服は、見る者の視線を一気に引き込む。腰から上で切り取られているが、その断ち切り方が人物を山のように雄大に見せている。

ゴッホの筆づかいは荒々しくも温かく、鋭い眼差しと口元には、子どもが兵士に憧れるときの素朴な純粋さが宿っている。威厳をまといながらも、その内側に潜むやさしさが、絵の奥からじんわりと滲み出している。軍服に包まれた男の顔には、戦いのための強さと、同時に弱さや慈しみが共存している。

別バージョンの《ズアーブ兵》

《座るズアーブ像》1888年6月、個人蔵

《座るズアーブ像》1888年6月、個人蔵
  • 制作:1888年6月
  • 寸法:65 cm x 81 cm
  • 技法:油彩、カンヴァス
  • 所蔵:個人蔵

《ズアーブ兵(全身像)》は、力強さよりも、投げやりで気怠さを漂わせている。大きく広がる衣装は山のような威容ではなく、兵士の存在を人間的に軽くしている。正面に座る姿は近寄りがたい軍人像を崩し、むしろ親しみを感じさせる。鋭い眼差しでありながら、全体からは威圧感よりも疲れや優しさが滲む。色彩の強さと態度の緩さが拮抗し、そこに生身の人間らしさが浮かび上がる。

 

《ズアーブ兵》の周作
  • 制作:1888年6月
  • 寸法:31.5 x 23.6 cm
  • 技法:水彩、クレヨン、ウォーブ紙
  • 所蔵:メトロポリタン美術館

油彩画のための習作として描いたもの。ゴッホは、この絵を7月に友人の画家エミール・ベルナールに送っている。現在は、ニューヨークのメトロポリタン美術館の所蔵。

クレラー・ミュラー美術館の《ズアーブ兵》

ゴッホ《ミリエ少尉の肖像(恋する男)》1888年9月-10月

タイトルは、《ミリエ少尉の肖像(恋する男)》。ゴッホのアルル時代の友人だったフランス軍の少尉ポール=ウジェーヌ・ミリエを描いたもの。

酒飲み仲間であり、ミリエ少尉にゴッホは絵を教えていた。女性にモテたらしく、タイトルに茶化して「恋する男」と入れていることから仲の良さも伺える。軍服の黒、赤い帽子が映えるように、背景は濃い緑。右上の星と月がズアーブ兵(歩兵)であることを表している。子どもが描いたような愛嬌のある筆致。軍人という厳しい職をまといながらも、童心が漂うこの肖像は、ゴッホのユーモアと温かさがにじむ一枚。

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