アートの聖書

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ダリ《ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌》〜白球とキノコ雲、静寂の球場、遅れてくる爆音

ダリ《ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌》

  • 英題:Uranium and Atomica Melancholica Idyll
  • 作者:サルヴァドール・ダリ
  • 制作:1945年
  • 寸法:66.5 cm × 86.5cm
  • 技法:油彩、カンヴァス
  • 所蔵:ソフィア王妃芸術センター(スペイン)

ピカソがゲルニカの空爆をモチーフにしたように、ダリは広島や長崎の原子爆弾を絵にした。天井からは器具がぶら下がり、床では爆煙が花のように咲く。象は針の脚で空を歩き、中央の胸像には黒い飛行機の影が刺さっている。すべてが静かで、しかし音だけが遅れて聞こえてくる気配がある。

ダリの"眼"に感心させられるのは、野球と戦争を結びつけていること。野球はホーム(家)に生還するスポーツであり、戦争の縮図である。バットやボールといった武器を使う。ダリが野球好きだったかは知らないが、野球が「戦争の比喩」であることを嗅ぎ当てている。

打つ(うつ)と撃つ(うつ)が、日本語では同じ音をもつ。ベースは基地。ランナーは帰還兵の影。ダリが描いた夜の遊園地と戦場と球場をまぜた巨大セット。この絵は「世界の九回裏」である。

ピカソもダリも凄いのは、惨劇をドロドロに描かず、むしろ中和して美しく描いている。それこそが画家の使命であることを達観している。

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