
- 英題:Twins
- 作者:パウル・クレー
- 制作:1930年
- 寸法:不明
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵:アーティゾン美術館(東京)
スイスの画家パウル・クレーが50歳前後の晩年に描いた油彩画。アーティゾン美術館では、Tシャツやブローチなどのグッズが売られ、マスコットキャラクター的な存在。
自分が双子(兄)だから、余計に感慨深い作品。
双子は1/2。ニコイチ。1+1ではなく、1×1の存在。体も魂もひとつ。人生を歩む足は、それぞれ別にある。それぞれ別の人生を歩む。それでも体と魂は繋がっている。クレーは一人っ子だったと思うが、見事に双子の真実を捉えている。
絵画レビュー:ふたりでひとつ、ひとりでふたつ

人のようで、人じゃない。布のかたまりのようで、ちゃんと歩いている。顔はふたつあるのに、人格はひとつに見える。
パウル・クレー《双子》が描いているのは、「ふたご」という言葉が持つ可愛らしさや仲の良さではない。それらを、静かに裏返してくる。
よく見ると、この二人は決して左右対称ではない。色も違う。線も違う。重なり方も違う。一方は赤く、もう一方は淡い。片方は前に出て、片方はわずかに引いている。
これは他人同士ではない。ひとりの人間の内側にある、二つの気配だ。
強気な自分と、臆病な自分。前に出たい自分と、隠れたい自分。やりたい自分と、やらなければならない自分。
それらが分裂せず、同じ身体を共有したまま、無理やり一緒に歩いている姿。それが、この《双子》である。
この二人は、決して仲が良さそうに見えない。視線は合わず、完全に噛み合ってもいない。けれど、離れることもできない。
人は、自分の中の矛盾を置き去りにしては生きられない。どちらか一方だけを選ぶこともできない。クレーはその現実を、深刻にせず、誤魔化しもせず、淡々と見せている。
青一色の背景も決定的だ。物語も、風景も、説明もない。逃げ場のない空間に、この双児だけがぽつんと立っている。
双子でなくても、思ってしまう。これ、自分じゃないか?
人は誰もが、ひとりでありながら複数だ。
理性と感情。
社会の顔と本音。
未来を信じる自分と、不安に立ち止まる自分。
それらは、きれいに分離できない。だから人は今日も、内なる双児を連れて歩いている。《双子》は、かわいい抽象画でも、不思議なキャラクター画でもない。
ズレていていい。完全に分かれなくていい。少し気まずくても、一緒に歩けばいい。
クレーは、そう言っている。この二人は今日も黙って歩いている。その歩幅は、あなたのすぐ隣にある。
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