
- 原題:Tod und Leben(ドイツ語)
- 作者:グスタフ・クリムト
- 制作:1915年
- 寸法:178 cm × 198 cm
- 技法:油彩、カンヴァス
- 所蔵: レオポルド美術館(オーストリア)
クリムトが亡くなる3年前、50代前半で完成させた最晩年の傑作。ウィーンのレオポルド美術館に所蔵されている。2022年11月、環境保護団体ラスト・ジェネレーションの活動家に黒い油性の液体をかけられたが、保護ガラスがあったので無事だった。

《死と生》は、1910年に完成したオリジナルのバージョンがあり、1915年にクリムトが手直しをしている。元は死神がうなだれ、背景も金が施されていた。
絵画レビュー:クリムト《死と生》

左に立つ死神も、右側の誕生も、ともに男根のかたちをしている。しかし、死神のそれは力を失い、役目を終えたあと。手にしている棍棒も、男の性としての夢の名残。つわものどもが夢の跡。
クリムトのすごさは、「死」と「生」を不協和音ではなく、調和として描いているところにある。常識的には「生」が始まりで、「死」が終わりだと考える。しかし、クリムトは、「死」を先に置いた。そこに深い意味がある。
宇宙のはじまり「ビッグバン」は、激しい爆発、つまり破壊から生まれた。最初にあったのは「無」、つまり「死」である。そして、そこから「生」が立ち上がってきた。クリムトは、この世の真理を捉えていた。
右側の「生」の世界には、赤ん坊、母、老人、恋人たちがいる。それぞれが寄り添い、眠るように安心している。誕生は祝福され、多くの人に包まれて始まる。
一方、死神はひとりで立っている。しかし、その孤独は寂しさではなく、強さだ。死は遠くから生を見守る。命が生まれ、育ち、つながっていく様子を、静かに見守る。
死神はもう力を誇っていない。生や性の祝福を邪魔せず、そっと後ろから支えている。終わりの存在があるからこそ、命は輝きを持つ。クリムトはこの一枚に、命のはじまりと終わり、その間にあるつながりと孤独、そして見守るまなざしまで、すべてを描ききっている。この絵には、生きるとは何か、死ぬとは何か、その根本の問いへのひとつの答えがある。
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