アートの聖書

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ダリ《自画像》〜沈黙の銃弾、芸術は弾丸である

ダリ《自画像》

  • 英題:Self‑Portrait (Figueres)
  • 作者:サルヴァドール・ダリ
  • 制作:1921年
  • 寸法:36cm × 42cm
  • 技法:油彩、黄麻布
  • 所蔵:サルバドール・ダリ美術館(アメリカ)

アメリカ・フロリダ州セントピーターズバーグ、サルバドール・ダリ美術館に飾られている一枚の肖像画。描かれたのは、17歳から18歳の頃のダリ自身。

そこに映っているのは、若者の記録ではない。黒いフェルト帽、スカーフ、そしてパイプという“演出された仮面”を使って、若きダリが自己像を演舞した。

ダリは正直にさらけ出しているようで、本当に大切にしていることは隠している。本心を絵にすることで隠れんぼしている。だから観賞者は本当の本当を探そうとする。ダリはかくれんぼの達人。

怪しい、胡散くさい、ナルシスティック。しかし、単なる自己の外見の記録ではなく、その画力が心を鷲掴みにし、意識を蹂躙する。

ダリ《自画像》〜沈黙の銃弾、芸術は弾丸である

顔の半分以上が影に沈み、わずかに光を受けた左眼が、見る者を正面から捉える。顔面は蒼白で死神のようであり、赤と緑が静かな狂気、抑圧された情熱。その風貌は、殺し屋のようである。誰の命も奪わず、ただ視線だけで殺すような、超越的な殺意。

世界は狂っている。言葉はすでに虚実にまみれ、信頼を失っている。ダリは、パイプをくわえ、口を閉ざす。その目は叫ばず、その口は笑わず、ただ見ている。

この「見る」という行為だけで、視線だけで、ダリはすべてを撃ち抜く。すなわち、視覚芸術である「絵画」で、世界を変えてやろうという意志。

この自画像は、ダリが世界に対して放つ最初の銃弾である。

ダリ、最初の自画像

  • 英題:Self-Portrait in the Studio
  • 制作:1919年
  • 寸法:26.7 x 21 cm
  • 技法:油彩、カンヴァス
  • 所蔵:サルバドール・ダリ美術館(アメリカ)

セントピーターズバーグのサルバドール・ダリ美術館には、ダリが15歳で描いた最初の自画像も所蔵されている。これから世界へ羽ばたくような大きなドアの向こうには、故郷の海が広がる。ダリはカンヴァスという大海原に、大航海を始めていく。

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