アートの聖書

美術館巡りの日々を告白。美術より美術館のファン。

国立新美術館〜森のガラス船、毎回が”初めて”になるミュージアム

国立新美術館,六本木

「国立新美術館(The National Art Center, Tokyo)は、東京・六本木にある国内最大級の展示スペースを持つミュージアム。日本で5館目の国立美術館として、2007年(平成19年)1月に開館した。月曜ではなく、火曜が定休の美術館。

国立新美術館の歴史

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国立新美術館は常設展がなく、所蔵作品を持たないため、英語表記は「ミュージアム」ではなく「アートセンター」としている。

設計・黒川紀章

国立新美術館,六本木

設計は埼玉県立近代美術館やオランダのゴッホ美術館(新館)を手がけた黒川紀章。これが27番目の美術館デザインであり、遺作でもある。

国立新美術館,六本木

曲線を多用したガラスカーテンウォールは、自然光をたっぷり取り込み、時間帯や季節によって表情を変える。

国立新美術館,六本木

吹き抜けのロビーや逆円錐形のカフェスペースは、訪れる人を視覚的にも感覚的にも楽しませてくれる。

国立新美術館,六本木

廊下は広く、展示スペースも直線のシンプルな移動だけなので、迷うストレスがない。

国立新美術館,六本木

国立新美術館は、家電に例えるとiPhoneやMacなどのApple。スタイリッシュに洗練されている。

国立新美術館,六本木

展示スペースも柱がほとんど皆無。広々とした空間が広がる。

国立新美術館,六本木

黒川紀章の設計は、人工物だらけの室内にいるのに、庭園にいるような開放と安らぎがある。美術館の建築において、右に出る者はいない。

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美術館の枠にとらわれない自由で柔軟な空間は、六本木という都市の喧騒の中にありながら、静けさと憩いの時間が流れている。

アクセス

国立新美術館,六本木

国立新美術館は、千代田線の乃木坂駅(6出口)から直結で雨に濡れず行ける。新宿からは大江戸線で六本木駅の7出口から歩く。

国立新美術館,六本木

美術館通りを徒歩4分。この移動も港区とは思えない静かさを体感できる。

国立新美術館,六本木

信号を渡れば、国立新美術館のゲート。ここは元々、1928(昭和3)年に旧陸軍第一師団歩兵第三連隊の兵舎が建設された場所。砲台の近くに造られた横須賀美術館を思い出す。

国立新美術館,六本木

「森の中の美術館」をコンセプトに設計された建物の南側、ウェーブ状のガラスカーテンウォールが迎えてくれる。黒川紀章は、もっと木を植えて森のようにしたかったが、北側の住宅街の光を遮ってしまうので、最小限にとどめた。

美術館メシ

国立新美術館,六本木

ミュージアムショップ

黒川紀章が美術館を設計する際に、重視しているのがレストランやカフェ。企画展に興味を持たなくても、飲食スペースが評判になれば、ご飯を食べるついでに展覧会を見ようと思える。その想いが反映され、国立新美術館は、地下1階から3階まで、すべてのフロアにカフェやレストランがある。

地下1階:カフェテリア カレ
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地下ミュージアムショップに隣接する、「カフェテリア カレ」。四角い(カレ:仏語)の名がつき、ハッシュドビーフやパスタなどがある。

1階:カフェ コキーユ

国立新美術館,六本木

天井高21.6mのアトリウムにあるオープンカフェ。貝(コキーユ:仏語)のように波打つイメージ。

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サンドイッチ、アイスクリームやドリンクなど軽食が中心で、屋外のテラス席もある。

3階:ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼf:id:balladlee:20250526155228j:image

フランス料理を気軽に楽しめるレストラン。リヨンの郷土料理が中心。

サロン・ド・テ ロンド(2階)

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国立新美術館で最も有名な飲食スペースが2階のサロン・ド・テ ロンド。2階展示室の目の前にある逆円錐型の建物の上部に広がる円形(ロンド:仏語)のティールーム。

サンドイッチなどの軽食やドリンク、展覧会とのコラボスイーツを提供する。

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新海誠の映画『君の名は。』で瀧と奥寺先輩がデートする。その後、多くのファンが訪れてサンドイッチを食べる。
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室内のカフェなら肩肘はる雰囲気だが、開放された空間なので落ち着ける。
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瀧と奥寺先輩が座ったソファ席。ふたりはサンドイッチとスープのAセット1540円を頼んだ。高校生の瀧にしては奮発しただろう。サクサクのバケットと、モチモチのハムチーズの相性が絶品。
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食いしん坊なので、飲み物、本日のケーキもついたCセットをオーダー。これで2420円。なかなかの豪華ランチ。他の飲食スペースも気になるが、次回も「サロン・ド・テ ロンド」で食事したい。

企画展と公募展

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国立新美術館の展示室は12。「企画展」と「公募展」が開催される。

企画展

《アニエールのレストラン・ド・ラ・シレーヌ》ゴッホとの出逢い、原点の色

2016年には、ルノワールの《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》を初めて日本に呼んだ。かつては、ルノワールの最高傑作《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》も呼んでいる。

《アニエールのレストラン・ド・ラ・シレーヌ》ゴッホとの出逢い、原点の色

《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》と一緒にオルセー美術館から来日したのが《アニエールのレストラン・ド・ラ・シレーヌ》。これがゴッホとの初めての出逢い。だから思い入れが強い美術館。同じ年の9月にムンクの《叫び》を観たのが最後。今回の来訪が9年ぶりになる。

リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s

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2025年3月19日から2025年6月30日まで開催しているのが、建築をテーマにした展示。国立西洋美術を設計したル・コルビュジエなどの建築アートを体験する。2階の展示は無料で開放しており、実際に家具などに座ったり寝転んだりできる。
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新宿のアパートは千冊以上の書籍、山道具、料理道具などで溢れかえってインテリアどころの騒ぎではない。いつか生活に余裕ができたら、家具にこだわってみたい。今回は写真だけ駆け足で紹介する。
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公募展

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国立新美術館のアイデンティが公募展。黒川紀章が美術館をデザインする際、作品の搬入やスタッフの休憩場所など、設計で最も頭を悩ませたのが公募展の存在。

新海誠の『君の名は。』では、瀧がランチをしたあと、写真展『郷愁』の飛騨のコーナーで糸守町を発見する。物語が大きく動く重要な役割を担った。

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訪れた日は、日本最初の洋画団体「太平洋美術会」の展示が行われていた。『君の名は。』と同じく、郷愁を誘う絵が多く、日本人の絵師の画力の高さを堪能できる。

一つ一つの絵画を語りたいが、あまりに数が多いので写真だけで割愛する。
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壁は白が基調なので絵画が、すっきりと美しく際立つ。
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国立新美術館を訪れて思うのは、企画展と公募展だけでも十二分に訪れる価値があること。もちろん、常設展示室があればさらに嬉しいが、それを補って余りあるほどの多彩な展示が用意されている。

これほど充実した公募展を気軽に楽しめる美術館は、東京でも希少な存在。訪れるたびにまったく新しい世界と出会える。知らなかった画家に出会え、自分の感性と重なる作品を見つけてしまう。

六本木という洗練された土地柄も相まって、館内には外国人の姿も多く、静けさのなかに多様な文化の気配が漂う。この空間が、これからも日本のアートを世界へ発信する起点であり続けてほしい。

建築、光、空間、そしてアート。それぞれが静かに語りかけてくるこの場所で、思わぬ発見と心の揺らぎが待っている。美術館の楽しさは「観ること」だけでなく、「歩くこと」だと実感できる。常設展示がない分、必ず「初めての出逢い」が待っている。これぞ都会にあるべき、東京が誇る美術館である。

国立新美術館の概要

  • 開館:2007年(平成19年)1月
  • 住所:東京都港区六本木7丁目22−2
  • 設計:黒川紀章
  • 所蔵:なし
  • 撮影:OK
  • カフェ:サロン・ド・テ ロンド
  • アクセス:「乃木坂駅」直結、「六本木駅」から徒歩4分

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