
- 原題:La tour Eiffel
- 英題:The Eiffel Tower
- 作者:ジョルジュ・スーラ
- 制作:1889年
- 寸法:24 x 15 cm
- 技法:油彩、木製パネル
- 所蔵:サンフランシスコ美術館(アメリカ)
31歳で亡くなったフランスの点描画家ジョルジュ・スーラが描いた一枚。1889年の夏の完成を前に絵を描いている。まだ頂上ができていない姿は、バベルの塔のようである。
スーラのエッフェル塔は異常だ。なにが異常かというと、まったく硬くない。鉄骨の怪物が、光の中でふわふわと浮いている。重量3000トンの塔が、ここでは“風が吹いたら揺れそうな妖精”みたいな存在になっている。
スーラの点描は、いわば光の粒で編んだレース。そのレースを塔にふわりとかぶせたら、こうなる。塔の足元はレンガや鉄ではなく、色の気配が積み重なってできた“塔の気分”である。
この絵の前に立つと、まず気づくのは、塔が“線”ではなく“波”で描かれていることだ。輪郭線は消えている。でも消えたのではなく、光の気圧差だけで浮き上がる。これは塔ではなく、巨大なアンテナだ。スーラは、塔が放つ「パリの気分」という電波を受信した。この塔、もしかして歌ってないか?と疑いたくなる。
塔の脚は、もはやアーチではない。足を広げ、威風堂々とドヤ顔をしている。
もう一つの主役が、パリの空気。パリの空気は、静かに騒がしい。少し憂鬱で、同時にロマンチック。光が勝手に散り、色が勝手に踊る街。スーラはそれを“空気のスープ”として描いた。塔は、そのスープの中に沈む巨大な具材だ。
エッフェル塔を記念撮影する人は多い。でもスーラは、塔が世界に発信する気象情報を描いた。晴れているのに霞んで、くっきりしているのにぼやけて、存在感があるのに消え入りそう。この絵は、塔の一日で一番機嫌の良い時間を、スーラがキャッチした一枚。
鉄の塔が息をするわけがない?いや、スーラが描くと、する。点の揺らぎ、光の粒の跳ね方、青の深呼吸。画面全体が、静かに「はぁ」と息をしている。
スーラは、鉄の塔を光の妖精に変えた。この一枚は、パリに吹く魔法の風の“証明写真”である。
アンリ・ルソーのエッフェル塔
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