
- 英題:As the Old Sing, So Pipe the Young
- 作者:ヤン・ステーン
- 制作:1663年 - 1665年頃
- 寸法:83.8×91.9 cm
- 技法:カンヴァス、油彩
- 所蔵:マウリッツハイス王立美術館(オランダ)
オランダ黄金時代で特に有名な画家のひとりがヤン・ステーン。レンブラントと同郷ライデンの生まれで、ハーグ、デルフト、ハールレムなど移住を繰り返した引越し魔。故郷に引きこもりだったフェルメールとは対照的。
多ジャンルの画家で、静物画、肖像画、歴史画、宗教画など800枚ほどの絵画を描いたが、画家と兼業で居酒屋を経営していた点は、フェルメールと共通している。大酒飲みだったかわからないが、愉快な絵画が多いのはアルコールの力かもしれない。
この絵は「年寄りが歌えば、若者が笛を吹く」という、ことわざを描いたもの。子どもは、悪い行為を含めて真似をするので、大人は正しい手本を示さなければならないという警告を描いている。中央でパイプを吸っているのがヤン・ステーンである。
絵画レビュー:オフラインにならない家庭
ことわざの意味は、どうでもいい。絵画はもっと自由だ。
部屋は散らかり、テーブルは酒と食べ物でごちゃごちゃ、犬は床をうろつき、子どもは笛を吹く。この家、大丈夫か?
舞台は17世紀オランダの家庭。だが、この一家、静かに夕食をとる気はまったくない。祖母は陽気に歌い、子どもはそれを真似て笛を吹く。母親は帳簿か何かを書きつつも、完全に流れに飲み込まれている。父親らしき人物は酒を楽しみ、部屋の奥ではさらに誰かが参加している。
秩序?今日はお休みである。室内は雑然とし、鍋や桶は床に転がり、犬は自由に歩き回る。子どもは大人の真似をしている。
この絵が面白いのは、笑えるのに、ちょっと怖い。子は親を見て育つ。年長者が節度を失えば、若い世代もそれを当然のものとして吸収する。音楽のように、態度も伝染する。歌えば、笛が鳴る。
これは、ただのホームパーティーの絵ではない。道徳のコメディである。だが、説教臭くはない。ここがステーンの凄みだ。指を振り上げない。代わりに、にやりと笑う。
祖母の歌声は楽しげだし、子どもの笛も無邪気だ。部屋には温かい光が差し込み、火は暖炉で燃えている。混沌の中に生活感がある。完全な崩壊ではない。ギリギリのバランスだ。だからこそリアルなのだ。
この絵は、完璧な家庭の理想ではなく、人間くさい家庭の真実を描いている。酒もある。笑いもある。だらしなさもある。教育も、失敗も、全部同時に存在している。
老いが歌えば、若きが笛吹く。
大人のふるまいは、次の世代へのライブ配信だ。オフラインにならない。子どもは常に視聴中である。
ステーンは、混乱を描きながら、社会の仕組みを見せる。この家族は騒がしい。でも、どこか愛おしい。
マウリッツハイス王立美術館にあるヤン・ステーン作品

ヤン・ステーン《牡蠣を食べる少女》(1658年-1660年頃)
レンブラントと同郷ライデンの生まれのヤン・ステーン。スナップ写真のようなコミカルな一場面。優れたアーティストほど、非日常ではなく日常を愛する。

集団画だが、最も気合を入れて描いているのがワンちゃんというのが面白い。





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