アートの聖書

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ヨハネス・フェルメール《合奏》〜音の消えた三重奏、気まずさのハーモニー

  • 蘭題:Het concert
  • 作者:ヨハネス・フェルメール
  • 制作:1664年頃
  • 寸法:72.5 cm × 64.7 cm
  • 技法:カンヴァス、油彩
  • 所蔵:イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館(ボストン)

三人の奏者が作る和声が、室内に満ちている。クラヴィコードの響き、リュートの調べ、そして歌声。背景の絵画《取り持ち女》が、音楽に潜む恋の寓意を密かに告げる。床やテーブルに置かれた楽器は、演奏の合間に息を潜めるもう一人の登場人物。

フェルメール《合奏》(1664年頃)は、クラヴィコードを演奏する女性、リュートを弾く男性、立って歌う女性の三重奏を描く。背景の絵画が2枚ある珍しい構図で、右の背景画《取り持ち女》はフェルメールの義母が所蔵していたもの。フェルメールも同名の絵画を初期に描いている。

本作は1669年に売却された記録が残るが、その後の所在は不明となり、1892年に収集家イザベラ・スチュワート・ガードナーが購入し、ボストンの同名美術館に展示された。しかし1990年、武装強盗に襲われ、本作を含む13点が盗難された。《合奏》はいまも行方不明で、評価額は2億ドルを超えるとされる。

テーブル下の床に置かれた弦楽器は「ヴィオラ ダ ガンバ」で、テーブルに置かれているのは「リュート」。これらの楽器が誰のものか、フェルメールは謎を残している。

絵画レビュー:フェルメール《合奏》

大塚美術館で再現した《合奏》

これは“世界一静かなコンサート”である。完璧なサイレントステージ。

でもよく見ると、部屋の空気が“音”になっている。ここには「沈黙のラブソング」がある。

左の女は、曲を間違えていない。右の女は、音程が微妙にズレている。そして男は、「うん、悪くないけど、もうちょっとテンポを上げて」と言い出しそうな顔をしている。この3人の関係性。どう見てもバンド結成前夜だ。

でも、ここでちょっと不思議なのは、絵の配置。壁には風景画が2枚。そして床には楽器のケースが転がっている。椅子の位置も、楽譜の置き方も、完璧にバランスが取れているのに、「人間関係」だけが不安定。

見ているこちらは思わず妄想してしまう。

この男、左の女の恋人だな。で、右の女は“友達”。いや、友達を装ってるけど、本当は三角関係の緊張がこの空気に漂っている。

だから音がないのだ。“気まずさ”が音を飲み込んでいる。フェルメールは沈黙の重さをも音楽にしている。

 

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