アートの聖書

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パブロ・ピカソ《マンドリンを持つ少女》〜砕けた視線、透きとおる記憶、ガラスの恋人

パブロ・ピカソ《マンドリンを持つ少女》

  • 英題:Girl with a Mandolin
  • 作者:パブロ・ピカソ
  • 制作:1910年
  • 寸法:100.3 x 73.6 cm
  • 技法:カンヴァス、油彩
  • 所蔵:ニューヨーク近代美術館(MoMA)

ガラス片のように砕かれながら映し出される女性像《マンドリンを持つ少女》は、ピカソがスペインを旅行中に描いた一枚。ニューヨーク近代美術館(MoMA)で、《アヴィニョンの娘たち》の隣に展示されている。

タイトルは「少女」になっているが、モデルは当時のピカソの恋人フェルナンド・オリヴィエ。

恋人を写実的に、あるいは美しさを盛って描かず、彫刻のように身体を分解し、構造的に再構成している。そこに冷たさや機械的な印象はない。ピカソにとって恋人は、単なる愛情の対象ではなく、「芸術」へと昇華すべき存在である証が刻まれている。

ひとつの画面に正面、横顔、俯瞰、斜めといった複数の視点が同時に織り込まれており、その姿は、ガラスのように繊細で、触れれば壊れてしまいそうな美しさと、命の儚さを映している。

透明な立方体の中に断片的な情報を積み重ねていく「設計図」のような絵画。それでも、この絵から「感情」は消えていない。この絵はピカソの「記録」であり、同時に「記憶」にもなっている。

単に若さや美貌だけを描いていたら、そのときは喜ぶだおる。しかし後年、オリヴィエが見返すことはないだろう。それは現在の老いた自分を突きつける鏡になってしまうからだ。しかし、《マンドリンを持つ少女》には、当時ピカソが彼女に注いだ愛情が、確かに集約されている。年を重ねても、その記憶は美しく輝き続ける。

フェルナンド・オリヴィエの肖像画

《フェルナンド・オリヴィエの肖像》1906年

《フェルナンド・オリヴィエの肖像》1906年

1906年に描かれた「薔薇色の時代」の肖像画。こちらは色彩を明るく、ストレートに愛情を投射している。

シュテーデル美術館,1909年

シュテーデル美術館,1909年

《マンドリンを持つ少女》の前年に描かれたキュビズムのバージョン。美しさよりも、女性が持つ強さを描き出している。この時期は、ピカソの「分析的キュビズム」にあたる時代。

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