アートの聖書

美術館巡りの日々を告白。美術より美術館のファン。

ダリ《謎めいた要素のある風景》〜砂漠に置かれたアトリエ、静寂のオマージュ

ダリ《謎めいた要素のある風景》

  • 英題:Enigmatic Elements in a Landscape
  • 作者:サルヴァドール・ダリ
  • 制作:1934年
  • 寸法:72.8×59.5cm
  • 技法:油彩、板
  • 所蔵:ガラ=サルバドール・ダリ財団(スペイン)

ダリが最も評価していた画家であるフェルメールの《絵画芸術》をモチーフにした一枚。フェルメールがアトリエの小さな空間を描いたのとは対照に、広大な荒野に置いている。砂原は白く、影は長く、塔は赤い傷口のように立つ。黒い糸杉は門番のごとく沈黙し、遠景には豆粒ほどの人影。ひとり、椅子に腰かけた画家は測鉛棒を掲げ、無音の世界に物差しを差し込む。

フェルメール《絵画芸術》

ダリは1947年の自著『魔術的技巧50の秘密』に「ダリ流分析に基づく画家の価値比較(9項目×20点満点)」を載せている。その中でフェルメールを史上最高の画家に挙げている。

画家 技術 霊感 色彩 素描力 天才性 構成力 独創性 神秘性 真実性 合計(/180)
レオナルド・ダ・ヴィンチ 17 18 15 19 20 18 19 20 20 166
メッソニエ 5 0 1 3 0 1 2 17 18 47
アングル 15 12 11 15 0 6 6 10 20 95
ベラスケス 20 19 20 19 20 20 20 15 20 173
ブグロー 11 1 1 1 0 0 0 0 15 29
ダリ 12 17 10 17 19 18 17 19 19 148
ピカソ 9 19 9 18 20 16 7 2 7 107
ラファエロ 19 19 18 20 20 20 20 20 20 176
マネ 3 1 6 4 0 4 5 0 14 37
フェルメール 20 20 20 20 20 20 19 20 20 179
モンドリアン 0 0 0 0 0 0.5 0 0 3.5 4.0

また、ダリは同じ1934年に、同じフェルメールを題材にした絵を何枚も描いている。

《テーブルとしても使えるデルフトのフェルメールの幽霊》

絵画レビュー:《謎めいた要素のある風景》

《謎めいた要素のある風景》

“砂漠ステージに降りた巨大な幕”。空がまるごとスクリーン、色は青緑から金へグラデーション。音は無いのに、熱だけがゆっくり押し寄せてくる。

左では、赤い塔が火の残像のように立ち、黒い糸杉がコーラス隊みたいに並ぶ。前にかかる布は、怪獣の横顔にも見える門番。入場は許可制だ。

人物が豆粒のように小さく描かれる。地球の前で画家はちっぽけな存在にすぎない。その雄大さを一枚のカンヴァスに封じ、宇宙の言葉へと訳してみせる。やわらかな光と静けさには、フェルメールへのオマージュがにじむ。

この絵は、宇宙のリハーサル。小さな画家がカチンコを鳴らすたび、雲が照明になり、塔が小道具になり、糸杉が合唱する。「よーい、世界」。

ダリの傑作絵画

ゴッホの画業と炎の伝説

ゴッホの画業と代表作

ピカソの画業と傑作絵画

フェルメールの画業と全作品解説

藤田嗣治の傑作絵画

クリムトの生涯と代表作

ジョルジュ・スーラの傑作絵画と画業

日本のおすすめ美術館

東京のおすすめ美術館

神奈川のおすすめ美術館

オランダおすすめ美術館

妄想ミュージアム『エヴェレスト美術館』